[2023_03_24_08]東海再処理施設 ガラス固化 完了時期 28年度から見直しへ 新溶融炉を報道陣に公開(東京新聞2023年3月24日)
 
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東海再処理施設 ガラス固化 完了時期 28年度から見直しへ 新溶融炉を報道陣に公開

 日本原子力研究開発機構は二十三日、廃止措置を進める東海再処理施設(茨城県東海村)で、トラブルによる中断が長期化している高レベル放射性廃液のガラス固化処理の再開に向け、二〇二四年度末に導入予定の新しい溶融炉(「三号溶融炉」)を報道陣に公開した。機構は固化処理の完了時期について「(再開後の)二五年度に新たに示す」と説明。二八年度までに終えるとしてきた計画は事実上、見直されることになった。(竹島勇)

 再処理廃止措置技術開発センターの永里良彦センター長は「(処理を)早く進めるという方針は変わらないが、現時点で(完了時期を)いつとは言えない。(新しい炉の)運転状況を見た上で二五年度に改めて示す」と話した。
 ガラス固化処理は、使用済み核燃料の再処理の過程で発生する極めて放射能の高い高レベル廃液を、千〜二千度で溶かしたガラスと混ぜ、化学的・物理的に安定した「ガラス固化体」にする工程。
 新しい溶融炉は縦横が一・九メートル、高さが二・三メートル。現行の炉と基本構造は同じだが、想定より早く底部にガラスが堆積するトラブルで固化処理の中断が続いたため、底部の形状を現行の四角すいからガラスがたまりにくい円すいに変更するなどの改善を施した。現行の炉と同様、四十八時間で一本のガラス固化体を製造する能力を持つ。
 この日は、放射性物質を含まない模擬廃液を使って作動実験を実施。開始一分ほどで溶融炉の下部から、ガラスと混ぜた朱色の液体が半径三十センチ、高さ一・二メートルほどの円筒形のステンレス容器内に流れ落ちた。

 ◆16年以降 5回中断

 日本原子力研究開発機構の東海再処理施設では、高レベル放射性廃液のガラス固化処理の中断が長期化している。廃止措置に向けて固化処理を始めた二〇一六年以降、五回にわたり中断。この間、実際にガラス溶融炉が稼働していた期間は通算一年にも満たない。
 機構は、二八年度までにガラス固化体を八百八十本製造し、全ての残留廃液の固化処理を終える計画だ。だが、製造済みは三百五十四本にとどまる。
 五回目の作業中断は昨年九月一日から。廃液を溶けたガラスと混ぜる溶融炉の底に、固まったガラスが想定より早くたまったのが原因で、二回目(一七年六月〜一九年七月)、四回目(二一年九月〜二二年七月)と同じ。溶融炉の運転に伴い必ず発生する現象ではあるが、「想定より早く起きた」(担当者)。
 四回目の中断は、三回目のトラブルを解消する際に、炉内に残っていたガラスを排出しきれていなかったのが要因とされる。
 高レベル廃液は極めて放射能が高く、漏えいや蒸発のリスクを早期に軽減するため、廃止措置の工程の中でも最優先の作業と位置付けられている。
 原子力規制委員会の東海再処理施設安全監視チームも再三にわたり、固化処理の完了を急ぐよう機構に促してきた。機構幹部も「東海再処理施設にとって一番重要な業務がガラス固化だ」と力を込める。
 機構は四回目の中断を受け、現行の溶融炉を今後は使わず、開発中の新しい溶融炉への更新を前倒しする検討を開始。昨年十二月に決定した。二四年度末の稼働を目指している。
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