[2023_02_21_02]「本音のコラム」 安全性と多数決「原子力規制委員会」原発「60年超の運転」容認 鎌田慧(ルポライター)(東京新聞2023年2月21日)
 
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「本音のコラム」 安全性と多数決「原子力規制委員会」原発「60年超の運転」容認 鎌田慧(ルポライター)

 広島、長崎と二度にわたる核爆弾の被爆とビキニ環礁実験による漁船の被ばく。世界史的な被害を受けてなお、日本が世界有数の核発電・原発の設置国になったのは、「クリーンエネルギー」とする政府の政策と、福井県高浜町で暴露された、電力会社のカネに糸目をつけぬ買収攻勢があった。
 いま岸田内閣がGX、「グリーン」への転換などと称して原発60年超の運転、新増設など国の未来を危険に晒す政策を打ちだしたのは、福島原発事故から12年、財界、電力会社から慫慂(しょうよう)(注)されてのことであろう。
 かつて原発を監督するのは「原子力安全・保安院」だった。が、原発推進の経済産業省に包摂されていて機能せず「ピッチャーとアンパイアがおなじ人格」だった。
 それで環境省外局の「原子力規制委員会」に変えられ、「原子力規制庁」が事務方を担うことになった。ところが規制庁はいまや長官、次長ともに元経産官僚が取って代わって、元の木阿弥(もくあみ)。
 規制委も「60年超の運転」の閣議決定をそのまま容認した。運転期間を決めるのは推進側の判断で規制委は関わらない、との意見にたいして、石渡明委員は「60年もすると部品が調達できない」と発言、「科学的、技術的な新知見に基づくものではない。安全側への改変とも言えない。反対だ」と批判した。それでも多数決で決定した。
(2月21日「東京新聞」朝刊25面「本音のコラム」より)

(注)「慫慂(しょうよう)」
 そうするように誘って、しきりに勧めること。…「デジタル大辞泉」より
KEY_WORD:石渡明氏原発60年超運転に反対_: