[2022_12_21_05]原発政策転換アンケート 「60年超運転」「建て替え」に反対6割、賛成3割弱(西日本新聞2022年12月21日)
 
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原発政策転換アンケート 「60年超運転」「建て替え」に反対6割、賛成3割弱

 政府は22日にも、最長60年としている原発の運転期間を延長し、廃炉後の建て替えも進める方針を正式決定する。原発の積極活用にかじを切るこの政策転換について、西日本新聞「あなたの特命取材班」はLINE(ライン)でつながる全国の「あな特通信員」にアンケートで考えを聞いた。60年超運転と、建て替えの賛否は、いずれも「反対」「どちらかといえば反対」が6割に達し、「賛成」「どちらかといえば賛成」は3割弱にとどまった。(森亮輔)
 2011年の福島第1原発事故を受け、その後の政権は原発依存度の低減を掲げた。事故前は制限がなかった運転期間は、原則40年とし、1回に限り20年延長できるルールを導入。新増設や建て替えは「想定していない」としてきた。
 岸田文雄首相は二酸化炭素を出さない脱炭素電源への期待や、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーへの不安を背景に、原発政策の見直しを進めている。
 13〜16日にアンケートし、583人が応じた。60年超運転に「賛成」は14・4%、「どちらかといえば賛成」は12・3%。「反対」は52・3%、「どちらかといえば反対」は12・2%だった。建て替えは「賛成」が15・1%、「どちらかといえば賛成」が14・4%。「反対」は50・6%、「どちらかといえば反対」は10・8%だった。
 賛否の理由を聞いたところ、60年超運転、建て替えとも内容はほぼ同じ。「賛成」「どちらかといえば賛成」の論拠は、電力の安定供給や電気料金の抑制に役立つとする意見が目立った。「実際は反対。早く同等の電力確保を考えないと」(福岡市の48歳女性)など、手放しでは賛成できないとする回答も複数あった。
 「反対」「どちらかといえば反対」の理由は、安全性の不安や、核のごみなど将来への「負の遺産」を懸念する声が大半。ウクライナで原発が攻撃され、危機感を強めた通信員も少なくなく、反撃能力の保有と原発活用を進める首相の姿勢を「矛盾もいいところ」(福岡市の48歳パート女性)と断じた意見もあった。

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 アンケートは多様な声を聞き取るのが目的で、無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なります。

 「議論拙速」意見相次ぐ

 アンケートでは、60年超運転、建て替えへの賛否にかかわらず、政策転換に至る過程が拙速だと訴える意見が相次いだ。岸田文雄首相が、原発を巡る現行ルールの見直し検討を指示したのは参院選後の8月。回答には「国民的議論が足りない」といった指摘や、被害が広範囲に及んだ福島第1原発事故を踏まえて「立地自治体や周辺市町村での議論も必要」と主張する意見、「選挙や国民投票で問うべきだ」との声もあった。
 60年超運転と、建て替えをともに「賛成」とした福岡県築上町の社会福祉法人役員の男性(68)は、アンケートに「少し拙速過ぎる」と書き込んだ。記者の直接取材には「時間をかけ、広く丁寧に国民の意見を聞いてほしい。反対意見が無視されては、いくら目的が正しくても進まない」と応じ、合意形成に時間をかける必要性を強調した。
 福岡市の自営業の女性(52)は、安倍晋三元首相の国葬実施や、防衛力強化を巡る増税方針を挙げて「岸田内閣になってから、さまざまなことが独断的に進められている」と回答した。
 政府の検討の経緯に理解を示す意見もあった。徳島市の女性会社員(61)は「議論は足りていないかもしれないが、緊急案件なので仕方ない部分もある」。福岡市の男性会社員(44)は「遅い。夏も電力不足だったのに(政策転換を)なぜ冬まで持ち越したのか」と記した。
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