[2022_12_03_03]老朽原発の運転期間延長は日本を滅ぼす! 運転期間は今後も「原子炉等規制法の規制条項」として残すべき 老朽原発の稼働は、国民の命と健康、環境を犠牲にする 永野勇(原発さよなら千葉)(たんぽぽ舎2022年12月3日)
 
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老朽原発の運転期間延長は日本を滅ぼす! 運転期間は今後も「原子炉等規制法の規制条項」として残すべき 老朽原発の稼働は、国民の命と健康、環境を犠牲にする 永野勇(原発さよなら千葉)

 原発運転期間延長問題で、11月25日の日経新聞報道では「停止期間外し原発運転期間延長 政府・与党、上限撤廃見送り」となっているので、これだけ見ると、上限撤廃案が見送られたので、ああ良かったと思われた方がいると思いますが、そうではありません。

 【運転期間(原則40年・最長60年)は福島第一原発大事故の教訓として定められたもので安易に改定(今回は改悪)すべきではありません】

◎ 運転期間40年は、原子炉等規制法で規制条項として定められたもので、所管は原子力規制委員会であり、改正は原子力規制委員会の権限です。
 運転期間40年については、論議経過では自民党・公明党の委員からは反対の意思表示があった事は事実ですが、最終的には、民主党(当時)、自民党、公明党の3者が合意し本会議で決まりました。
 そして運転期間40年が発電用原子炉の規制のために、作られたという証拠は沢山あります。

◎ 運転期間延長問題は、8月の岸田総理大臣がGX実行会議で指示を出したことが始まりです。
 そして、規制委員会は、経済産業省に説明を求め10月5日実施。その場で、運転期間40年は、規制条項ではなく(このことが間違いなのです)「利用政策」であるとして、規制委員会が経済産業省の考えを容認したことで、経済産業省が検討を進め今回の内容の報道となったのです。

◎ 経過としては、11月8日の資源エネルギー庁の原子力小委員会で、原発の運転期間の延長について
1.現状維持案 2.運転期間の上限撤廃案 3.運転期間から休止期間を除外する案(その休止期間を最長60年の運転期間にプラスするという内容)が示されました。
 今回の新聞報道は、政府・与党が2案を見送り3案にする方針を決めた。そして、運転期間の規定は電気事業法など経産省が所管する法律に移す。
 そのうえで経産省が電力の安定供給や脱炭素などの観点から延長を認定する仕組みにするとなっています。
 簡単に言えば、今後は、運転期間の規定は、電気事業法などに移し、延長は、通産省の考えでやりますという事です。

◎ 実は、この規制条項を原子炉等規制法から削除し、経済産業省所管の電気事業法などにすることが大問題なのです。
 いずれにしても、「運転期間は利用政策であり原子力規制委員会として意見を述べるべき事柄ではない」とする規制委員会の見解は誤りであり、規制委員会こそが運転期間を厳格に守らなければならないのです。

◎ 今回の規制委員会の前のめりの動きは大問題であると言わざるを得ません。
 もし仮に、今回これを許すとなると今後も「利用政策」であるとして、次々に経産省から改悪案が出され福島第一原発の大事故の反省の上に立って成立した法律が骨抜きにされてしまいます。
 運転期間は今後共、「原子炉等規制法の規制条項」として残し、少なくとも原子力ムラの要請により変更(運転期間延長)されるようなことがあってはなりません。

<老朽原発の再稼働はきわめて危険 再稼働すべきではありません>

◎ 老朽原発の再稼働はきわめて危険な行為であると言わざるをえません。
 今まで再稼働した原発のほとんどが何らかの事故をおこしています。このままでは必ず過酷事故が発生することが考えられます。
 私は、原子炉についての知識はありませんので、原子炉の危険性については他の多くの方が主張している通りだと思っています。

◎ 火力発電と原発の大きな違いは、火力発電は、事故が発生した場合に機械を停止すれば事故の影響は低減し火災等の場合を除いては事故現場に入ることが出来るのに対し、原発は原子炉の停止に成功しても原子炉を冷やす、放射性ガスを閉じ込めることに失敗すると過酷事故となることを、福島第一原発大事故が証明しています。この点が火力発電と原発では大きな違いがあります。

◎ 停止していた火力発電であれ原発であれ、その後の再稼働時の危険性を考える場合、大きなポイントは、停止中の保管状況(定例点検の実施状況含む)と点検調査内容(範囲含む)の2つだと思います。
 この場合、いつ再稼働するのかによって当然その内容も大きく変わってきます。
 例えば火力発電で、再稼働の予定無しの場合、ガードマンによる昼間何回かのパトロールで済む場合もあるでしょう。

◎ 原発の場合は、最低限、停止中であっても原子炉の冷却と放射能を閉じ込めておくために万全を期さなくてはならないので、その作業とそれに付随する作業があるので、それ相応の運転員の配置等、原発停止中の管理運営方針に基づいて運営されています。
 それと原発の場合点検不可能箇所が多過ぎるという問題点があります。
 また科学的に検査できる項目もそんなに多くは無いと思われます。
 また火力発電も原発も全数検査なんて不可能ですから、検査実施以外の個所をどう判断するのかという問題があります。原発の方がより厳格にしなければなりません。

◎ 一方、原子力規制委員会は、高経年化対策についても、政府交渉の場でずさんであることがよく分かりました。規制委員会は老朽炉の審査について、安全の立証責任は、事業者にあると繰り返し述べており、試験結果についても、現データや試験条件も確認せずに合格という結果だけを見て判断しているというのが実態であります。
 検査は、常に、どこかおかしくないかという疑問の念を持っていないとなかなか欠陥を見いだせません。

◎ 以上長くなりましたが、原発については、全数検査が出来ないこと(これは火力も同じ)、検査できない部分が多くこれの判断が難しいこと、原子力規制委員会の検査がお粗末であること等から考えられることは、高経年化による原子炉を含めた発電プラントの科学的判断は精度を欠いたものになる事が明らかであります。

◎ ということは老朽原発の稼働は、国民の命と健康、環境を犠牲にするものであり再稼働は絶対にすべきではないというのが、私の考えです。
 それと同時に、今までは、日本の行政は国民の命と健康を犠牲にしてから、物事に対処してきましたが、これからは国民の命と健康を犠牲にする前に対処するようにすべきであるということから考えても、老朽原発は再稼働すべきでは無いと思います。
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