[2022_11_27_01]原発推進派だらけの有識者会議、28日に方向性議論 運転期間延長や次世代型開発 「首相の指示」で結論急ぐ(東京新聞2022年11月27日)
 
参照元
原発推進派だらけの有識者会議、28日に方向性議論 運転期間延長や次世代型開発 「首相の指示」で結論急ぐ

 経済産業省は28日の有識者会議「原子力小委員会」で、「原則40年、最長60年」と規定された原発の運転期間の延長や次世代型原発の開発・建設などの原発活用策について方向性を示す。岸田文雄首相が8月に検討を指示してから3カ月ほどで議論は大詰めを迎えるが、結論が出る前に国民から意見を募ることはなく、過去のエネルギー政策の議論に比べても拙速さが際立つ。(増井のぞみ)

 ◆数回の分科会で政府方針の素案

 原子力政策について議論する原子力小委は、委員21人のうち、最近の会合で原発に否定的な発言をしているのは、NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長ら2人だけ。運転期間延長の議論では、多数の委員が最長60年とする上限を撤廃するよう求めた。28日の会合では、経産省側が世論の反発に配慮して上限は撤廃せず、再稼働に向けた審査などで停止した期間を運転年数から除外する案を推すとみられる。
 原子力小委での検討内容は、エネルギー政策関連の有識者会議をまとめる「基本政策分科会」で議論され、分科会での結論が政府方針の素案となる。
 その分科会も、委員の有識者21人から原発に慎重な意見はほとんど出ない。15日の会合では、消費生活アドバイザーの村上千里氏が「(原発活用は)電力需給逼迫の解消に直結しない。時間をかけて国民的な議論を深めることを提案したい」と、議論の進め方に異を唱えたが、ほかに再考を求める意見は出なかった。
 分科会の開催はこれまでに2回。年内に1〜2回開いて結論を出し、意見公募(パブリックコメント)はその後になる見通しだ。

 ◆エネ基本計画の議論は17回、ネットで意見も募る

 従来のエネルギー政策の検討は違った。
 昨年10月に策定されたエネルギー政策の中長期的な指針「第6次エネルギー基本計画」の議論では、分科会を10カ月間にわたって17回開いた。さらに、国民の意見を広く聞くため、議論中にホームページ上に意見箱を設置。寄せられた意見は分科会の各会合に資料として提出され、検討材料になった。合計で約640件の意見が集まり、約300件が脱原発を求めた一方、原発推進を支持したのは約80件だった。
 この時の分科会の委員からは2050年の脱炭素社会実現に向け、原発の運転期間延長や新増設が必要との意見が出たが、基本計画に明記はされなかった。福島事故後に記載されるようになった「(原発は)可能な限り依存度を低減する」との方針も維持された。

 ◆経産省幹部「年内結論の指示、時間かけられない」

 政府は直近の電力需給逼迫や燃料価格の高騰を背景に、原発活用を強調。しかし、次世代型原発の開発などには長期間かかって急場の対策にはならず、性急に結論を出す必要はない。分科会で村上氏がその矛盾を指摘した後も、経産省幹部は取材に「年内に結論という(岸田首相の)指示で、時間をかけられない。なるべく早く方向性を出す」と聞く耳を持たない。
 松久保氏は「国民の声を聞かず、政府が決めたいことを有識者会議に決めてもらう強引な進め方。原発ありきの政策は、将来にわたって再生可能エネルギーの導入余地を狭めかねない」と危ぶむ。
KEY_WORD:原発_運転期間_延長_:再生エネルギー_: