[2022_10_28_06]中国電力が竣功期間伸長許可を申請、また妨害予防請求訴訟を提訴 竣功期間伸長が許可されても現状と変わらず 民事調停で「法律論争をするつもりはない」と言いながら民事訴訟を提訴 連載「権利に基づく闘い」その33 熊本一規(明治学院大学名誉教授)(たんぽぽ2022年10月28日)
 
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中国電力が竣功期間伸長許可を申請、また妨害予防請求訴訟を提訴 竣功期間伸長が許可されても現状と変わらず 民事調停で「法律論争をするつもりはない」と言いながら民事訴訟を提訴 連載「権利に基づく闘い」その33 熊本一規(明治学院大学名誉教授)

 10月25日、中国電力は、来年1月に期限が切れる上関原発埋立免許の竣功期間(注1)の伸長許可を山口県知事に申請するとともに、ボーリング調査について妨害予防請求訴訟を山口地裁岩国支部に提訴しました。
 上関原発に係る埋立免許は、2008年10月22日に出されました。
 しかし、予定していた竣功期間内に竣功できなかったため、これまで竣功期間の伸長許可が、2012年11月、2016年6月、2019年7月と再三なされてきましたが、今回、さらに伸長許可を申請したのです。
 公有水面埋立法は、「埋立の着工及び竣功を知事の指定する期間内にしなければならない」(13条)旨定め、それができない場合には「埋立免許が失効する」(34条)旨、定めています。したがって、本来、2012年11月に竣功できなかった場合には埋立免許は失効になるのが当然だったのです。
 ところが、山口県と中電は、「正当な理由があると認められるときは、期間の伸長を許可できる」旨の公有水面埋立法13条の2を悪用して、再三再四の竣功期間伸長をしてきましたし、今回もまた伸長を企てているのです。
 期間伸長許可を得ないと上関原発建設が不可能になったことが明白になるので、今回伸長許可を申請したのは中電としては当然の行為であるものの、当初の竣功期間を10年も過ぎて「正当な理由」があるはずがないことは常識でもわかります。
 山口県と中電は、法律が想定していない事態(十年余りにもわたる再三再四の竣功期間伸長)を政治力でゴリ押ししようとしているのです。(注2)
 しかし、心配には及びません。今までも埋立免許があったわけですから、伸長許可が出されても今までの埋立免許が続くだけで何の変わりもありません。要するに、祝島漁民に補償がなされない限り、埋立ができないことには変わりないのです。
 ボーリング調査についての妨害予防請求訴訟の提訴には、呆れました。
 中国電力は、ボーリング調査をめぐって話し合いたいということで民事調停を申請し、10月5日にその一回目が開かれたのですが、中電が「法律論争をするつもりはない」と言ったために民亊調停は終わったのです(たんぽぽ舎メールマガジンNo.4597参照)。
 にもかかわらず、同じ案件で民事訴訟を提訴したのですから、わけがわかりません。
 竣功期間伸長の申請と同時に行なったことから推測すると、竣功期間の伸長を申請しておいて、ボーリング調査について何もしないのでは矛盾することになるので、形だけでも行なった、ということでしょう。
 もしも、民事調停が続いていたら、祝島島民の会から提出されていた質問状に10月末までに回答しなければならないところでしたから、回答できなかったり、支離滅裂な回答をしたりすると面目が立たないため、民亊調停は終わりにして回答を回避したうえで提訴し、形だけつくろったのではないでしょうか。
 とはいえ、権力に忖度したり、おもねたりする裁判官が多いので、裁判にも油断することなく取り組みたいと思います。
 皆さんの関心、監視も宜しくお願いいたします。

注1:「竣功」とは、工事が完了して建造物(埋立地)が完成すること。
   「竣功期間」とは竣功するまでの期間。

注2:上関原発以前には、埋立免許後に戦争が勃発し、事業主体が資金難に陥ったため着工期間の伸長の申請がなされ、受理されていたが、その後、なんら行政庁の処分がなされていない件に関し、「不許可になった場合には埋立免許取得者が訴えを持つことができたのに、行政庁が何も出さなかったために訴えを持てなかったのであるから」との理由で許可になったことが一件あるだけであった。
KEY_WORD:上関原発計画_: