[2022_10_12_10]JCO臨界被曝事故から23年 (下)(了) 日本の原子力史上で初めての直接被ばく犠牲者 真相を解明せず作業者に罪をかぶせた 動燃の注文が臨界安全規制値の7倍だったことが事故の原因だった 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年10月12日)
 
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JCO臨界被曝事故から23年 (下)(了) 日本の原子力史上で初めての直接被ばく犠牲者 真相を解明せず作業者に罪をかぶせた 動燃の注文が臨界安全規制値の7倍だったことが事故の原因だった 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎市民による政府の追及も行われた

 政府は、被曝はあったが健康被害は、従業員2人の死者と1名の重症以外はなかったと断定した。これが第1の犯罪である。政府は、これまでも広島・長崎の被爆者認定で、うそをつき続けた。黒い雨訴訟で敗訴した経緯がそれを証明している。
 今はそれが、福島第一原発事故の被災者にのしかかっている。
 第2の犯罪は、事故原因を2人の死者や従業員そしてJCOのみに押し付けたことである。
 国の原子力政策を問うこともなく、プルトニウム利用政策そのものの問題点も無視した。この燃料は高速炉「常陽」の核燃料だったから、発注者である動力炉・核燃料開発事業団の責任も問われていない。
 「常陽」がなければ事故は起こらなかった。事故の実態が明らかになればプルトニウム利用政策に重大な影響が出るとみたからだが、今日何が起きているかを見れば、この時に方針転換をしていたら傷はもっと浅かったことがわかる。
 事故原因については、市民団体と政府との交渉において「動燃の40リットル混合均一化注文は臨界安全規制値(6.5リットル)の7倍だから、違法である」ことを問題とし、追及した。
 経産省は「クロスブレンディング」でおこなう場合のみギリギリセーフ」などと回答していた。
 ところが原子力学会が2005年2月の報告書で「クロスブレンディングは不適切」とした。臨界安全規制値は容器毎ではなく作業単位ごとに設定しなければならず、クロスブレンディング法でも取扱作業量が全体で臨界質量を超えてしまう。
 政府に対して、この事実を認めるよう迫ったが、「正しい均一化なら良い」などと言い出す始末。「何を指して正しいというのか」と問うと「動燃とJCOがどのような契約をしたかは知らない」と変わり、ついには回答を拒否した。
 東海村JCO臨界事故は、沈殿槽に「バケツ」で6.5リットルずつ硝酸ウラニル溶液を投入し、7杯目(約40リットル)で臨界となった。
 だから、作業者が、なぜ7杯投入したのかを解明することが事故調査であるはずだ。
 ところが政府も、その後の住民訴訟では裁判所も「なぜ沈殿槽に入れたか」だけに終始し40リットル投入については何ら話題にならなかった。
 これは当時の発注者だった動力炉・核燃料開発事業団の免責すなわちプルトニウム政策への障害を取り除く国策的なからくりでだった。
 動燃の注文が臨界安全規制値の7倍だったことが事故の原因だったが、これを認めてしまえば動燃が進めていた高速増殖炉計画だけでなく、再処理工場での作業全体も疑問視されることを嫌った。
 この結果、沈殿槽を「発意したのは(亡くなったJCOの)篠原であり(同)大内も賛成した」などと、死人に口なしの判決になり、事故原因は2人の死者に押し付けられてしまった。これが福島第一原発事故ではどうなったか、明確だ。
 原子力安全体制の崩壊は、この頃から顕著になっていた。それを修正し安全側に立った施策にすることはある程度できたはずだが、原子力開発ひいては日本の核武装について極めて積極的な自民党政権には、そのような視点は最初からなかった。
 それがいま、よみがえろうとしている。
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