[2022_10_01_08]「原発政策の大転換」は亡国への道 国会で電力会社の首脳を集めて4つの質問・提案をする 電力不足!に騙されてはいけない 古賀茂明(古賀茂明政策ラボ代表)(たんぽぽ2022年10月1日)
 
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「原発政策の大転換」は亡国への道 国会で電力会社の首脳を集めて4つの質問・提案をする 電力不足!に騙されてはいけない 古賀茂明(古賀茂明政策ラボ代表)

 8月24日、岸田文雄首相は、原子力発電所の「新増設」について検討するよう指示を出した。「現時点では想定していない」としていた姿勢の大転換だと大きく報じられたが、これはかなり前から想定されたシナリオである。
 今年の冬、夏と日本では電力危機が叫ばれた。次の冬は、さらに深刻だと政府は叫ぶ。さらに、2050年カーボンニュートラルという目標達成には、火力発電増設は好ましくない。再生可能エネルギーを数か月で大幅に増やすのも困難。となれば、原子力発電しかないという議論が勢いづく。
 そういう計算があるから、政府は再エネ拡大策も省エネ推進策もとらず、あえて電力不足を演出した。
 一方、政治の舞台でカギを握る立憲民主党は、連合との関係で、動きが鈍い。あとは、国民の脱原発世論だけが頼りだが、では、国民に即時脱原発の正当性を再認識してもらうにはどうすれば良いのだろうか。
 私は、国会で原発を保有する電力会社の首脳を集めて、正面から議論することを提案したい。そこで、野党側からの4つの質間をするのだ。

 第1に、原発は民間耐震住宅並みの耐震性を備えるべきではないか。

 第2に、事故の際の無制限の損害賠償責任保険をかけるべきではないか。現在の電力会社の備えは政府運営の一種の保険だけだが一基当たりわずか1200億円。原発は危険すぎて引き受ける保険会社がなく、電力会社の社長たちは答えに窮する。

 第3に、避難計画を原子力規制委の審査対象にすべきではないか。避難計画が専門家未審査であることはあまり知られていない。

 第4に、核のゴミ処理計画を原子力規制委の審査対象にすべきではないか。社長たちは、1年では無理という。では2年でと言って審議を打ち切る。

 耐震性の話に戻るが、原発事故の被害の甚大さと日本が地震大国であることを考えれば、原発の耐震性が安全性の要であることは誰でもわかる。
 民間で耐震住宅を謳う三井ホームは最大5115ガルの揺れに耐える(「ガル」は、地震の強さを測る単位)。住友林業は3406ガル。
 21世紀の日本最大の揺れは、2008年岩手・宮城内陸地震の4O22ガル。東日本大震災は2933ガル。
 原発は、もちろん、これを上回る耐震性を備えるべきだ。
 しかし、実は、日本の原発の耐震性は600から1000ガル程度に過ぎない。2000年以降日本では1000ガル以上の地震は18回も起きた。これを聞いた国民は、せめて民間並みの耐震性はもたせて欲しいと言うだろう。
 社長たちは、「うちの原発の敷地に限って大きな地震は起きない」と答える。もうこの一点だけでも「原発は動かすな!」となるはずだ。
 さらに、ウクライナを見て国民は原発が戦争で敵に狙われた時のリスクを思い知らされた。
 電力不足と言っても、ピーク時に一部の地域で数%不足するというだけ。節電などで対応すれば経済への影響は極少化可能だ。
 一つ予言しておこう。この秋、「柏崎刈羽原発を動かせ!」という動きが出るだろう。
 これは電力不足対策ではなく、経産省の事実上の子会社となった東京電力の経営救済のためである。
 電力不足!に騙されてはいけない。

(2022年10月1日『奔流』第30号「大河の一滴(30)」 発行:千曲川・信濃川復権の会 より了承を得て転載)
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