[2022_10_01_02]ザポリージャ原発の送電系統が断続的に遮断 原発構内も繰り返し砲撃され設備に損傷 全原発が止まっても安全にはならないわけ 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年10月1日)
 
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ザポリージャ原発の送電系統が断続的に遮断 原発構内も繰り返し砲撃され設備に損傷 全原発が止まっても安全にはならないわけ 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 これは9/1発信【TMM:No4569】「ウクライナ戦争で原発が『核爆弾』に変わる恐怖」の続編です。

 1.ザポリージャ原発の6基が全て停止

 ウクライナの原子力企業「エネルゴアトム」は9月11日に、全基の原子炉を停止したと発表した。
 原発から送電する系統が断続的な攻撃により満足に機能しなくなり、さらに近隣の火力発電所からの送電線も被災し、原発への外部電源の全てを失う可能性が高くなったことで、安定的に運転することが不可能になったことが原因。
 原発のうち最後まで動いていた6号機は、通常の運転では外部に100万kWの送電を行うことが出来るが、外部の送電系統が遮断されて以降は、原発の他の5基を冷却するための電源を供給するために動かしていたとみられ、低出力で不安定な発電になっていたとみられる。
 一般的な軽水炉の場合、所内電力は運転時に発電出力の5%程度と考えられるから、6号機を含めて必要な電力は最大で30万kWほどと思われる。
 一方、運転を停止したら冷却が必要な炉内の燃料も発熱量が減少するから、運転時ほどの電力は必要なくなる。そのぶん時間と共に必要電力量が減少するから、今の段階ではおそらく1万kWもあれば十分なのかもしれない。

 2.外部電源系統のたび重なる遮断

 ロシアはウクライナ軍に、ウクライナはロシア側により攻撃され、送電設備が損傷して遮断が起きたと繰り返し主張する。
 どちらの攻撃にしても、原発が過酷事故を起こせば最悪の事態になることは、少なくても両国の原子力関係者(会社)は認識しているから、いわば「手加減して」攻撃を繰り返しているとみられる。
 原発への直接攻撃は、さすがに減ってきており、占領時点の戦闘のようなことは起きていないと見られる。
 しかし外部電源系統は文字通り網目のように張り巡らされているから、それを避けて攻撃することは難しい。
 あるいは、重要なインフラ設備は軍事目標でもあるので、送電システム、変電所などは攻撃の対象となる。
 このようなことから、双方の攻撃で各地で送電系統の遮断が起きるのは戦争をしている限り避けられない。(あるいは避けるつもりはない)

 3.現在の危機は福島第一原発事故と同じ

 ザポリージャ原発に直接損傷を与えるミサイルやロケット攻撃の懸念は依然としてある。
 一方で、クローズアップされるのは発電所に供給される外部電源が遮断され、発電所が電力を生成するためのすべてのバックアップ手段を失う場合の懸念もある。
 発電所に直接攻撃がなくてもメルトダウンを引き起こす可能性があることは、地震や津波の直接の破壊が終了した後に、3基の原子炉が次々にメルトダウンした福島第一原発事故を思い返せば分かる。
 また、もう一つの懸念は、発電所の運転員が、疲れ果てストレスを感じ、ミスを犯す可能性があるということである。
 このようなミスは、米国のスリーマイル島原発やチェルノブイリ原発で見られた。
 これらは悲惨な結果を招く可能性がある。それは外部の誘因なしに始まる事故である。
 最後の二つの可能性は、世界のどこの原子力発電所でも、戦争や軍事攻撃がなくても起こりうるのだから、ウクライナの原発ではより大きな懸念として日々積み上がっていることを忘れてはならない。
 このような極度の緊張に基づく危険性については、現在の規制基準のどこにも書かれていないことも指摘をしておく。
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