[2022_09_24_02]佐井・仏ケ浦 カルデラ由来か(東奥日報2022年9月24日)
 
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佐井・仏ケ浦 カルデラ由来か

 青森県佐井村の景勝地・仏ケ浦やその周辺地域が、440万年前の海底火山噴火によって形成されたくぼ地「カルデラ」に由来する地形だとする研究成果を、弘前大学大学院理工学研究科博士前期課程の盛合秀さん(23)と、同研究科の折橋裕二教授(55)らのチームが23日までにまとめた。仏ケ浦の形成時期はこれまで約1500万年前と考えられていたが、1千万年ほど新しいことが明らかになった。
 盛合さんらは今月4〜6日に東京で開かれた日本地質学会学術大会で、仏ケ浦のカルデラ由来説を発表した。既に判明している地形も含め、下北半島に東北地方有数のカルデラ群を見いだすことができた−と意義を強調している。
 研究では、仏ケ浦カルデラの形成過程を(1)約440万年前に海底火山が大規模噴火(2)海底にカルデラができ、火山灰や溶岩が固まった岩石が堆積(3)約300万〜200万年前に海底が急激に隆起して陸地になった−と分析した。仏ケ浦の東側にある縫道石山(626メートル)は、大規模噴火に先立つ約470万年前のマグマ活動でできたとしている。
 カルデラは、仏ケ浦を中心に直径約5キロの範囲だったと推定。仏ケ浦の奇岩は、カルデラを形成した大規模噴火の火山灰が押し固まった岩石との見解を示した。カルデラ内の北側に当たる仏ケ浦周辺の地域(佐井村福浦地区−牛滝地区の間)でも、当時の噴火に由来する岩石の分布を確認したという。
 仏ケ浦は、大陸から日本列島が離れて日本海を形成する過程の火山活動で出来上がったと考えられてきた。ただ、近年の研究で、仏ケ浦の岩石の年代が従来の説よりもかなり新しいという測定結果が出ていた。
 この知見を踏まえ、盛合さんは3年間にわたって実地で観測を行い、福浦地区でカルデラの壁面に表れる特徴的な地形を発見した。各地の山中で採取した岩石の年代測定を基に、仏ケ浦やその周辺に分布する岩石が近接地域に比べて年代が新しいことも判明。一連の成果を合わせて、一帯をカルデラ由来と結論づけた。
 「下北は研究の手がついていない場所が多い。今回のカルデラより南側の地域を調べると、下北半島の形成過程がより詳しく分かってくるのでは」と盛合さん。折橋教授は「下北半島で十和田や八甲田に匹敵するカルデラ群を見いだすことができた。半島全体のカルデラ群がいつ、どのように発達したのかを解明していきたい」と話す。

 仏ケ浦は下北ジオパークの主要地点の一つ。ジオパーク研究に関わる海洋研究開発機構むつ研究所(むつ市)の田中武男アドバイザーは「この地域で本格的な地質調査が行われたのは、おそらく約50年ぶり。(今回の研究は)下北半島全体の地質構造に関する基本的な考え方とも矛盾はない。大きな成果だ」と評価している。



カルデラ 火山活動で生じた大きなくぼ地。大規模噴火によって地上に大量の火山灰、軽石、溶岩などが噴出し、地下にあったマグマだまりが空洞化したところに地表が陥没する形成過程が一般的。県内には、カルデラ湖の十和田湖や、宇曽利山湖を含む霊場・恐山周辺の宇曽利カルデラなどがある。
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