[2022_09_23_04]「生命があるかも?」の星(島村英紀2022年9月23日)
 
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「生命があるかも?」の星

 かつて「地球物理学」といわれていたが「地球惑星科学」に名前を代える大学が多い。地球をもっと知るためには他の惑星との比較研究をしなければならない時代なのだ。
 そして、いまでは、水があり温度も地球のようなところでは生物が生まれることが分かってきている。つまり地球上の生物は、生まれるべくして生まれたものだということになった。
 だとすれば、この広い宇宙に地球のような惑星があって、そこに水があり気温も地球なみならば、地球とは別に生命が生まれたとしても不思議ではない。はじめは原始的な生物でも、時間がたてば進化して、やがて高等生物が生まれる可能性がある。地球よりも早く生物が生まれていれば人類よりももっと進化した生物がいても不思議ではない。
 かくて「地球外生命」の存在を否定できなくなった。いまの科学の関心は、こういった環境がある惑星を宇宙空間で探すことになっている。
 しかし、宇宙で惑星を見つけるのは難しい。宇宙には太陽のような恒星(こうせい)はあまたある。だが恒星は温度が高すぎて生物は暮らせない。けれども恒星の多くが惑星を従えている。
 地球もそうだが、惑星は太陽のように自分で光るわけではない。このため望遠鏡で見ることもできない。
 このため恒星が惑星に重力でわずかに振り回される動きを観測したり、惑星が恒星の前を横切るときにごくわずか恒星の明るさが減ることを観測したり、という間接的な手法で惑星がようやく見つかる。
 最近、新しい手法が加わった。高精度の赤外線分光器である。惑星は赤外線ではよく見える。
 この赤外線分光器は、たとえば米国・ハワイのマウナケア山頂にある日本の「すばる望遠鏡」にも搭載している。2019年に始まったすばる望遠鏡の観測では最初の2年間で50個以上の恒星が調べられた。
 そもそも宇宙には水が多い。ただし氷だったり、水酸化物として岩の中に含まれているものが多い。彗星(すいせい)はほとんど氷だ。
 いまの学問的な関心は、惑星で水が水として存在するかどうかどうかだ。専門用語では「ハビタブルゾーン」にあるかないかということだ。これによって生物が生まれるかどうかが決まる。
 いま見つかっているのは「ロス508b」だ。この惑星は恒星からの距離がちょうどよく、ハビタブルゾーンを横切るようになっている。ほかにいくつも見つかっている。
 508bはこれはへび座の頭部の方向、地球から約37光年の距離にある。太陽の5分の1の重さの恒星「ロス508」のまわりを約11日の周期で回っている。「ロス508b」は、重さが地球の4倍以上あり、地球のような岩石惑星である可能性が高い「超地球型」惑星だ。
 この惑星は、今後惑星大気の分子や原子の観測、より巨大な望遠鏡による生命探査など詳しい研究が行われる。
 米国はかねてから本気だ。人類を描いたペナントを50年前から各方面に送っていた。未知の惑星に住む高等生物と交信する試みは、すでに始まっているのである。
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