[2022_09_13_07]東京電力またも泥縄式対応…廃棄物保管場所がパンク間近 福島第一原発の汚染水処理滞る恐れ 規制委が増設指示(東京新聞2022年9月13日)
 
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東京電力またも泥縄式対応…廃棄物保管場所がパンク間近 福島第一原発の汚染水処理滞る恐れ 規制委が増設指示

 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理する際に発生する廃棄物の保管容量が逼迫している問題で、原子力規制委員会は12日の検討会で、廃棄物の置き場を早急に増設するよう東電に指示した。現状のままでは来年4月以降に置き場が満杯になり、汚染水処理が停滞する恐れが浮上したことが背景にある。その場しのぎの対応で事態を悪化させる東電の姿勢は、事故から11年半が過ぎても変わらない。(小野沢健太)

 ◆甘い見通しが招いた危機

 「この予測は信用できない。少し間違えば、破たんする」。規制委の伴信彦委員は検討会で、東電の甘い見通しを厳しく批判した。
 トリチウム以外の放射性物質を除去する多核種除去設備(ALPS)で発生する泥状の廃棄物を収納する容器「HIC」について議論。東電が示した発生量の予測に対し、規制委は想定通りに進まない場合を見込み、新たな置き場の増設を求めた。

 HIC 直径1.5メートル、高さ1.8メートル、厚さ約1センチのポリエチレン製の円筒形の高性能容器。トリチウム以外の放射性物質を除去する多核種除去設備(ALPS)で浄化処理する際、副産物として発生する泥状の廃棄物を収納する。敷地南側にある屋外の置き場に、コンクリートの箱の中に入れて保管。保管容量は4192基分で、今年8月4日時点で4027基が置かれている。置き場が満杯になれば、ALPSは運転できなくなる。

 このような窮状に陥ったのは、東電が不測の事態への備えをしなかったことが大きい。
 HICの内部には高い放射線量の汚泥が入っており、漏えい時のリスクが極めて高い。そのため、東電は汚泥を脱水して固形物化する設備を検討。脱水後の固形物は金属の箱に入れて別の倉庫で保管し、HICは焼却などして処分する。計画通りに進めば、設備が稼働する2022年度以降にHICは減り続け、置き場の容量は問題にならないはずだった。
 東電はこれまで、置き場の増設について「22年度に設備が運転開始することで対応可能」と否定し続けてきた。
 しかし、昨年6月の規制委の検討会で、設備の被ばく防止対策が不十分との指摘があり、その後の議論で設計を見直すことに。計画は当初予定から2年以上遅れることになった。

 ◆寿命超過で破損の恐れも

 さらに、計算外だったのがHICの耐用年数だ。東電は当初、25年以降に耐用年数を超えると考えていたが、これも規制委が想定の甘さを指摘。底部にたまった高密度の汚泥の影響を踏まえると、22年度中に79基ものHICが耐用年数を超え、破損する恐れがあることが判明した。
 東電は今年2月、寿命超過のHIC内の汚泥を、新しいHICに移し替える作業を開始。これによって22年度は処理作業で発生する分に加え、さらに45基が増える見通しになった。耐用年数を過小評価したために、約3カ月分に相当する量が余計に増えることになった。

 ◆繰り返される後手後手の対応

 これらの不測の事態が起きても、東電はすぐに保管容量の確保に動かなかった。今になってようやく、ALPSの運転方法の変更や、置き場の新設などを検討し、危機的状況の回避を試みる。
 事故当初、東電は汚染水の発生はすぐに止められると甘く見て、耐久性の低いボルト締め型のタンクを急造。汚染水は発生し続け、タンクからの水漏れ事故を頻発させた。甘い見通しで後手に回り、事態が深刻化していく泥縄式の対処が、またも繰り返されようとしている。
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