[2022_09_11_03]福島第一原発の汚染水処理、来春停滞する恐れ ずさんな廃棄物管理 保管場所が逼迫(東京新聞2022年9月11日)
 
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福島第一原発の汚染水処理、来春停滞する恐れ ずさんな廃棄物管理 保管場所が逼迫

 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理する際に発生する廃棄物について、来年4月ごろに保管場所が満杯になり、浄化処理設備を動かせなくなる恐れがあることが、東電への取材で分かった。東電は処理水の海洋放出に向けた準備を進める一方、廃棄物管理ではずさんな対応に終始。汚染水処理が滞りかねない。(小野沢健太)
 保管場所が逼迫する恐れがあるのは、トリチウム以外の放射性物質を除去する「多核種除去設備(ALPS)」で発生する泥状の廃棄物。「HIC」と呼ばれる容器に入れ、敷地南側の置き場で保管している。処理後の水は大量の海水で薄めて海洋放出する計画だ。
 HIC置き場の容量は、8月時点で96%が埋まっている。東電の予測では、現状の運用のまま推移した場合、来年4月末に満杯になるという。
 置き場がなくなれば、ALPSは運転できなくなる。ALPS処理前に除染設備で放射性セシウムとストロンチウムを低減させた水がたまり続ける。この浄化が不十分な水は、海洋放出の対象となる処理水とは別のタンク群で保管。漏えい時の危険度が処理水よりも格段に高い。
 東電はHIC置き場を改修し、追加で約1年分の保管スペースを作り出す計画で、満杯になる時期とほぼ同時の運用開始を目指す。しかし、改修工事は当初、今年3月には完了しているはずだった。耐震設計の見直しなどで工程は遅れ、今後も東電の想定通りに進むかは不確かだ。
 東電は当初、本年度中にHICを処分できる設備を稼働させる予定だった。稼働後はHICが減ることを見込み、新たな置き場の建設はしなかった。しかし、原子力規制委員会から設計不備を指摘され、稼働予定は2年以上遅れることに。不測の事態への備えを欠き、逼迫の恐れを招いた。
 東電の広報担当者は取材に「HICの発生抑制策の見通しがある程度ついており、保管容量が足りなくなることはないと考えるが、逼迫した場合に備えて置き場の増設も検討する」と説明した。

 HIC HIC高性能容器の略称で「ヒック」と呼ばれる。直径1・5メートル、高さ1・8メートル、厚さ約1センチのポリエチレン製の円筒形。多核種除去設備(ALPS)で浄化処理する際に発生する泥状の廃棄物を収納する。敷地南側にある屋外の置き場に、コンクリートの箱の中に入れて保管。保管容量は4192基分で、今年8月4日時点で4027基が置かれている。
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