[2022_08_30_05]原発処理水放出巡り漁業者追加支援「新基金で」 経産相(日経新聞2022年8月30日)
 
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原発処理水放出巡り漁業者追加支援「新基金で」 経産相

 政府は30日、東京電力福島第1原子力発電所で保管する処理水の処分に関する関係閣僚会議を開き、風評被害の抑制や漁業者への支援で追加策の検討に入ることを決めた。西村康稔経済産業相は同日の閣議後の記者会見で「持続的な対策を講じるために新たな基金を設けるべく取り組みたい」と述べた。
 政府は2023年春ごろの海洋放出開始をめざし、消費者や流通業者への説明会を続けるなどして風評被害を懸念する関係者の理解を得たい考えだ。
 21年12月に処理水の処分に伴う風評の影響払拭に向けた行動計画を策定し、東電の放出計画の安全確保や放出前後の海洋モニタリング、安全性に関わる科学的な情報の発信を実施してきた。30日午前に官邸で開いた関係閣僚会議で対策の強化や拡充の方向性についてとりまとめた。
 経産省は21年度の補正予算で300億円を計上し、処理水に関連して海産物の売り上げや需要が減る事態に迅速に対応するための基金を創設した。一時的な需要減に対して、冷凍できる水産物を買い取って保管し、企業の食堂で利用してもらうなど販路開拓を支援する計画だ。
 一方、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は将来にわたって漁業が安心して継続できるよう別の基金創設による追加支援を求めている。経産省は23年度予算の概算要求で金額を示さない「事項要求」に「長期にわたる水産業における影響を乗り越えるための施策」を盛り込んだ。新たな基金創設に向け関係省庁との調整を加速する。
 東電に対して風評被害が生じた場合の賠償基準を年内にも策定するよう指導する。これまでの賠償交渉で避難者らが東電に対して不信感を抱き、各地で国と東電を相手取った訴訟が相次いだ。度重なる不祥事もあって東電に対する信用は失われている。政府は処理水の放出が訴訟に発展する事態を避けるため、関係団体などと賠償基準について意見交換を進めている。
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