[2022_08_03_10]株主代表訴訟判決(13.3兆円)のもう一つの側面 「原子力ムラ」の重要な構成員であるゼネコン業界がこの判決を歓迎する背景は何 再稼働の前提となる防潮堤や特重施設などを作れば作るほど ゼネコンの仕事が増える 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕(たんぽぽ2022年8月3日)
 
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株主代表訴訟判決(13.3兆円)のもう一つの側面 「原子力ムラ」の重要な構成員であるゼネコン業界がこの判決を歓迎する背景は何 再稼働の前提となる防潮堤や特重施設などを作れば作るほど ゼネコンの仕事が増える 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

 
◎ すでに知られるとおり、2022年7月13日に東京地裁は、株主代表訴訟の判決で、旧経営陣の責任を認めて計13兆3210億円の賠償を命じる判決を出した。
 一方でこの判決の直前の6月17日には、避難住民らによる集団訴訟に対して最高裁は、国が規制権限を行使しなかったことについて国の責任は認めないとの判決(ただし全員一致ではない)を出した。

◎ 株主代表訴訟の判決で電力会社経営者に重い責任が問われたことから、いよいよ原発の外堀が埋まってきたと歓迎する雰囲気もみられる。
 しかしちょっと待てよと不安に感じる面がある。
 株主代表訴訟の被告は国ではなく東電の経営陣である。裁判所としては「どうぞご自由に」という立場ではないか。
 むしろ国の責任が問われないように全責任を東電に押しつける全体シナリオを補強する性格もある。

 ◎ 株主代表訴訟に関して「日経クロステック」というゼネコン系のネットメディアで【東京地裁「原発事故は防げた」、最高裁の津波対策“後知恵”説を論破】という記事が掲載された。
 この記事では、東京地裁が保守的な上級審(最高裁)に忖度せず市民側の主張を認めた判決を言い渡した英断として前向きに評価している。
 しかし「原子力ムラ」の重要な構成員であるゼネコン業界がこの判決を歓迎する背景は何だろうか?

◎ すでに報道されたように、7月27日に政府は「GX(グリーントランスフォーメーション)会議」を発足し、岸田首相はエネルギー危機や脱炭素を口実に原発フル活用の方針を示した。
 (※)脱原発の流れができたわけではない。こうした背景を考えると、株主代表訴訟の判決は必ずしも楽観できない。

◎ ゼネコンは原子力そのものに対しては責任がない。
 原発の新増設(建て替え)や新型炉はまだ先の話である。
 既存の原発に対して、役に立とうが立つまいが「言われたからやりました」という立場で再稼働の前提となる防潮堤や特重施設などを作れば作るほどゼネコンの仕事が増える。
 ゼネコンだけでなく関連する機械・電気メーカーも同じだ。
 しかも「原子力仕様」として普通の工事よりも高い単価を請求できる。
 脱原発の運動としてはこうした側面にも注目すべきではないだろうか。

(※)時事通信「原発フル活用へ布石
   岸田首相、新増設も視野か−GX会議」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022072700995&g=eco
KEY_WORD:東電株主訴訟_13兆円賠償命令_: