[2022_07_28_06]原発フル活用へ布石 岸田首相、新増設も視野か GX会議(時事通信2022年7月28日)
 
参照元
原発フル活用へ布石 岸田首相、新増設も視野か GX会議

 岸田文雄首相が地球温暖化対策のため27日に発足させたグリーントランスフォーメーション(GX)の実行会議は、東日本大震災・東京電力福島第1原発事故後の「脱原発」の流れを反転させ、原子力エネルギーを再び積極活用する布石でもある。首相は原発再稼働を加速したい考えで、将来的な新増設も視野に入れているようだ。
 27日の同会議に出席した首相は「1973年の石油危機以来のエネルギー危機が危惧される。まず危機の克服が優先だ。これなくしてGXはあり得ない」と強調。「次回会議では、原発再稼働とその先の展開策など政治決断が求められる項目を明確に示してほしい」と求めた。
 首相が脱原発からの転換を探るのは、産業革命以来の化石燃料中心社会の変革を図るGXに「原発は不可欠」(周辺)との判断がある。自民党も先の参院選公約で従来の「可能な限り原発依存度を低減」の文言を削り、「最大限の活用を図る」と踏み込んだ。
 この動きを後押しするのが「電力需給の逼迫(ひっぱく)」だ。政府は猛暑の今夏、企業や各家庭に節電を求めているが、今冬も電力不足に陥る恐れがあるとしている。原因については、(1)火力発電の休廃止(2)原発再稼働の遅れ(3)自然災害による供給力低下―と説明する。
 さらに、ウクライナ危機の影響で極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から日本が閉め出されるなどして、ロシアからの液化天然ガス(LNG)輸入が途絶えれば、「ガス・電力供給に甚大な影響が及ぶ」(政府関係者)と主張する。
 同会議が8月にも示す提言を踏まえ、首相はまずは14日の記者会見で打ち出した原発最大9基の今冬の運転を狙う。首相はこれにより「日本全体の電力消費量の約1割相当分を確保する」と意気込む。
 ただ、この9基は原子力規制委員会の審査を既にパスした原発。次に目指すのは審査未通過の原発の再稼働だ。さらに念頭には将来的な原発の新増設や建て替えもあるとみられる。22日の講演では「次世代軽水炉、小型原子炉、核融合といった技術の研究開発に取り組みたい」と語った。
 GX推進の動きには経済界の影もちらつく。27日の会議後、メンバーの十倉雅和経団連会長は記者団に「(原発活用は)待ったなしだ」と指摘。首相の発言は原発再稼働への決意の表れとの見方を示し、「決断に大いに敬意を払う」と評価した。ただ、脱原発を求める世論は根強く、首相に対する反発の声が出ることも予想される。
KEY_WORD:温室効果ガス_原発新増設_:FUKU1_:HIGASHINIHON_:ウクライナ_原発_:小型原子炉_: