[2022_07_22_02]東電処理水放出認可 地元合意形成に猶予なく(産経新聞2022年7月22日)
 
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東電処理水放出認可 地元合意形成に猶予なく

 東京電力福島第1原発の処理水放出計画は22日に正式に認可され、海底トンネルの本格的な工事に向けて立地自治体の了解を取り付ける局面へと進んだ。令和5年春頃とした放出開始時期が近づくなか、反対論はなお根強く、設備が整ったとしても放出に踏み切れるかは不透明な状況が続く。貯蔵タンクの容量にも限りがあり、放出を先送りすることになれば、廃炉作業にも影響を及ぼしかねない。
 放出設備の工事を本格的に始めるには規制委の認可に加え、東電が福島県と大熊町、双葉町と結んだ協定に基づき、事前にそれぞれの了解を得る必要がある。立地自治体によると、その可否は「設備の安全性の観点から行われ、風評対策などとは分けて進められる」(大熊町)ことになる。
 ただ、実際に放出を始めるには、地元の合意形成は不可欠だ。政府と東電は「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と説明してきた。東電は認可後のコメントでも「説明を尽くし、継続して懸念や関心に向き合い、一つ一つ応えていく」との姿勢を表明した。しかし、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が6月に「断固反対」とする特別決議を全会一致で採択するなど、同意を得る糸口は見いだされていない。
 一方、同原発では当初に比べて抑制されてはいるものの、現在も1日当たり約130トン(3年度実績)の汚染水が発生している。タンクに貯蔵された処理水は7月14日時点で約130万トン。すでに約1千基あるタンクも容量全体(137万トン)の96%を使っており、5年夏から秋頃にかけて満杯となるとされる。
 タンクを増設すれば、構内の敷地が逼迫(ひっぱく)し、廃炉作業の妨げになりかねない。地震での漏洩(ろうえい)リスクも付きまとう。政府と東電が目標とした5年春頃の放出開始時期は迫りつつあり、合意形成に費やすことができる時間は長くはない。(玉崎栄次)
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