[2022_07_21_03]原発処理水海洋放出問題 風評へ具体策見えず 相双漁協・今野新組合長に聞く(河北新報2022年7月21日)
 
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原発処理水海洋放出問題 風評へ具体策見えず 相双漁協・今野新組合長に聞く

 東日本大震災の津波と東京電力福島第1原発事故により壊滅的な被害を受けた福島県の相馬双葉漁協(相馬市)。復興への取り組みが進むが、来春には放射性物質のトリチウムなどを含んだ第1原発処理水の海洋放出が開始されようとしている。新たな風評被害への不安は強く、反対する漁業者は依然多い。6月就任した今野智光組合長(63)に海洋放出への考えなどを聞いた。
(南相馬支局・早川俊哉)

 −処理水放出への反対姿勢に変わりはないのか。
 「第1原発の廃炉作業は早く進めてほしいし、陸上のタンクにいつまでも保管するのが難しいことも分かる。悩ましい問題だと思うが、基本的には反対だ」

 −放出されてしまえば、福島の水産物などに風評被害が出るかもしれない。国と東電の対策への評価は。
 「県内の漁業者は約1100人。そのうち700人ほどは相双漁協所属。いわき市と違いこちらは沿岸漁業で、風評被害が起きれば最も深刻なダメージを受ける。それなのに対策はまだ大枠だけ。具体策が見えず、組合員から不満の声が出ている」
 「風評対策の中に『冷凍できる水産物は国が買って一時保管する』という項目があるが対策にならない。相双漁協の主力魚種はヒラメやカレイ。冷凍して流通させることはあり得ない」
 −処理水を今後どう処分するかに関し、国や東電は「関係者の理解」が不可欠だと言っていたが、漁業団体が反対する中で海洋放出を決めた経緯がある。
 「何をもって漁業者側が『理解した』となるのか、国に聞いても答えてもらったことがない。いつも『(処理水について)説明します』と言うだけ。そうしているうちに既成事実が積み重なっていくようで、心配になってくる」

 −念願の本格操業復活への道筋は。
 「(東日本大震災後に国が事業化した)『がんばる漁業』に取り組みながら操業日数や水揚げ高を増やし、本格操業につなげたい。ヒラメなどの資源保護にも力を入れ、5年先、10年先を見据えて漁協を運営していくつもりだ」
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