[2022_07_15_08]略奪を後世に伝えるために片付けない チェルノブイリ原発の今は(毎日新聞2022年7月15日)
 
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略奪を後世に伝えるために片付けない チェルノブイリ原発の今は

 ウクライナ政府の許可を得て7月8日、チェルノブイリ原発に入った。占領の生々しい傷痕が残る一方、ロシアの再侵攻に備えて厳戒態勢が続いていた。
 30キロ手前のゲートで制限区域に入る手続きを済ませると、川にかかる橋が破壊され通行不能になっていた。ウクライナ軍が退避する際と、ロシア軍が撤収する際に爆破されたといい、未舗装の脇道と仮設の橋を通る必要があった。その後も原発までは武装したウクライナ兵による検問が3カ所あり、パスポートや許可証の提示を求められた。うち1カ所では「身元を確認するため」として30分以上待機させられた。
 原発の西側の森は、事故で大量の放射性物質が降り注ぎ「赤い森」と呼ばれる。ロシア軍のバリケードや仮設のテントが残り、舗装されていない場所はロシアの地雷が埋まっている恐れがあるため立ち入りは禁じられている。
 原発では略奪からの復旧はおおむね終わり、職員らは通常勤務をしている。ただ近くのある関連施設では、事務室をあえてそのまま残していた。パソコンや棚の中身が奪われて室内はめちゃくちゃにされており、略奪のすさまじさを後世に伝えていくという。
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 毎日新聞は7月中旬に、ロシア軍がチェルノブイリ原発を占拠した当時、内部で勤務していた警備部門責任者のワレリー・セメニョフさん(47)に話を聞いた。
 突如、原発に乗り込んできたロシア軍にどう接し、安全管理に努めたのか。36年前に史上最大といわれた原発事故を起こしたチェルノブイリで、悲劇を再発させてはならない。セメニョフさんは自身が感じた恐怖、幾つかの決断、そして今でもロシアに抱く怒りを打ち明けた。【チェルノブイリで平野光芳】
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