[2022_06_19_13]【原発賠償訴訟 統一判断の衝撃】(上)国の責任問い続ける 裁判外の救済、見通せず(福島民報2022年6月19日)
 
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【原発賠償訴訟 統一判断の衝撃】(上)国の責任問い続ける 裁判外の救済、見通せず

 2022/06/19 17:26
 東京電力福島第一原発事故の避難者らが国や東電に損害賠償を求めた福島(生業=なりわい)など4件の集団訴訟の上告審判決から一夜明けた18日、原告と弁護団は国の責任を否定した最高裁の判断を受け止め、次の一歩を踏み出した。国の責任を巡る初の統一判断は同種訴訟をはじめ事故を巡る訴訟に影響する可能性がある。原告の一人は「被害の実情と国の責任をこれからも訴える」と法廷の内外で声を上げ続ける決意を口にした。
 全国に約30ある集団訴訟のうち、原告数で最大規模の福島訴訟は、最高裁判決の出た約3500人以外にも「第二陣」の約1150人が国と東電を相手に福島地裁で争っている。弁護団の鈴木雅貴弁護士(36)は18日午後、南相馬市で開いた原告募集説明会に出席した。「国の責任が認められず悔しいが、東電の賠償責任は確定している。第一陣が切り開いた道をさらに進もう」と追加提訴への参加を呼びかけた。
 原告・弁護団は新たに原告に加わる人を各地で募っており、18日は2回の説明会を開いた。一連の訴訟の目的に「全ての被害者の救済を目指す」とうたっている。最高裁で国の責任を認める判決を勝ち取り、目標とする被災者支援に関する制度・法律の充実につなげる考えだった。ただ、国の責任を否定する統一判断が示されたことで、戦略の見直しを迫られ、目標達成までの道のりはより険しくなる恐れがある。
 鈴木弁護士は「国の賠償基準に納得していない人は、裁判をしなければ被害を救済されない可能性が高まってしまった」と危惧する。係争中の訴訟で国の責任を巡る主張をどう進めるかは弁護団で引き続き協議する。
 「判決は事故前の国の安全対策を問う、重要な争点の判断を避けた。到底、納得できない」。福島訴訟原告団長の中島孝さん(66)は同日午後3時ごろ、東京都からバスで相馬市に戻り、経営するスーパーに出た。商品を並べていても判決への憤りが頭から離れない。
 国が東電に指示して「仮に防潮堤や防波堤を設置しても、事故は防げなかった可能性が高い」という、仮定に基づく判決を「社会が受け入れるべきではない」と語る。
 中島さんら第一陣の原告は3月の最高裁決定により、国の賠償基準「中間指針」を上回る賠償が認められた。東電の賠償責任は確定しているが、個々の訴訟では賠償額などを巡り、原告、被告双方の主張と反論が当面は続くとみられる。
 中島さんは十分な賠償を得られるよう第二陣の原告らを支援するとともに県や県議会、全国の原発立地自治体への要請などを通し、原発の安全対策や被災者支援の充実を訴えるつもりだ。中島さんは「同じような事故を起こさないためにも声を上げ続ける」と前を向いた。
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