[2022_06_17_11]専門家と記者が解説[原発集団訴訟]【国の責任認めず】判決の意義と今後の波及(福テレ2022年6月17日)
 
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専門家と記者が解説[原発集団訴訟]【国の責任認めず】判決の意義と今後の波及

 2022/06/17 20:05 2022年06月17日 20:05
 <最高裁判所は原発事故について国の責任を否定 これが意味することとは?>
 社会に与える影響などについて原発事故の賠償問題に詳しい大阪公立大学の除本理史教授に話を聞いた。

 [Q:この判決についてどのように受けとめたか?]
 大阪公立大学・除本理史教授:
 「国の責任について、今までの裁判で争点となってきた【津波予測長期評価】の信頼性について言及していないということで、肩透かし感があります。被災者からしても、到底納得できない判決だと思います。過去の教訓を未来へつなげていくという点でも、非常に問題が多い判決だと思いました」

 [Q:2022年3月に最高裁は東京電力の責任を認め、賠償を確定。一方で国の責任を認めなかった。この違いはどこに?]
 大阪公立大学・除本理史教授:
 「元々、東京電力の責任について『原賠法』という法律があります。東京電力の過失の有無を問わずに賠償すべきものはさせるというものに基づいて、東京電力の責任はすべて認められてきている。国の責任ついては半々のような判断が裁判所ではなされてきたと。
 3月の東京電力の賠償責任が確定したということの意味は、賠償の総額をまず決めて東京電力についてはそれを支払うべきだと決まった。今回の最高裁の判決で国の責任の判断というのは、その賠償総額について国も負担すべきかどうかが問われていたわけですけども、負担をする必要はないという判断を最高裁が下したという事だと思います」

 [Q:今後の賠償基準の見直しについて、判決が与える影響は?]
 大阪公立大学・除本理史教授:
 「今の賠償基準が十分ではないんだという事自体は、すでに3月の最高裁の決定で明らかになっている。国の審議会である『原賠審』も、賠償の指針の見直しをするかの検討をはじめていたとう事もそうした経緯からです。ですから【国の責任は認められなかった】という事をもって賠償指針の見直しを止めるべきではないし、むしろきちんと被害実態を踏まえ見直しを進めていくべきだろうと思います」

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 <原告団の今後の動きや他の集団訴訟への影響について 福島テレビ阿部加奈子記者の報告>
 福島テレビ・阿部加奈子記者:
 「原発事故を巡る集団訴訟は全国では約30ある。地裁・高裁レベルで判断が分かれていたが「国は津波を予測でき対策を取らせれば事故は防げたか」という争点は共通している。
 今回の最高裁の決定は少なからず、影響すると考えられるが原告団は「この最高裁の判決を地裁・高裁の裁判官に考えてほしい」と話している。

 [原告団の今後の動きは?]
 原発事故の責任を求めてきた原告たちのなかには、最高裁判決までに100人以上の原告が亡くなっている。原告団の真の願いは「二度と同じような事故を起こさないこと」そのために、この事故の原因は何だったのか、誰の責任があったのか、事故からの教訓を得るための裁判でもあったわけだが、福島・生業訴訟弁護団の中島孝団長は「この判決では国はまた同じ過ちを繰り返すと思う。私は許せないし、これからも戦います」と話した。
 福島・生業訴訟では、追加で提訴する原告を募ることにしていて、国や福島県、被災自治体などを回って今後も国の責任について追及していくことにしている。

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 <判決を受け東京電力の小早川社長も心からのお詫びを発表>
 小早川社長は、東京電力にとって【福島への責任の貫徹は最大の使命】と述べ、「復興と廃炉の両立」「賠償の貫徹」に向けて先頭に立ち全力で取り組むと改めて決意を示している。
 一方の国は、今回の最高裁判決で責任は無かったとされた。
 しかし原発政策を進めてきたのも事実で、事故の結果として福島県の復興にも時間がかかる。
 震災・原発事故から11年3ヵ月。福島県の復興をけん引すること。
 そして、廃炉作業が滞りなく進むよう東京電力の取り組みを厳しく見つめながら後押しすること。
 国が果たすべき役割がなくなったわけではない。
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