[2022_06_10_04]東北電・東通原発1号機 「設備審査」なお未着手 規制委への申請から8年(東奥日報2022年6月10日)
 
 東北電力が再稼働を目指す東通原発1号機(東通村)の安全審査は、原子力規制委員会への申請から10日で丸8年を迎えた。耐震設計の目安となる滞れ「基準地震動」の策定に最も影響を与えるとされる断層モデルの議論は4月の審査会合でほぼ終結。地震・津波審査はようやく全体像を見通せる段階に進んだ。しかし設備面のプラント審査には入れず、審議項目には「未着手」の印が並ぶ。
     (佐々木大輔、熊谷慎吉)
 「東北電はステップ・バイ・ステップ(一歩ずつ)だから」。原子力規制庁幹部は慎重な審査姿勢をそう表現する。
 プラント審査に本格移行するには、設計要件としての基準地震動などの策定が欠かせない。東北電は2014年6月の申請時点で地震動を600ガルとしたが、大幅な引き上げが必要との判断に至れば、安全対策工事にも影響が及ぶためだ。
 東北電は審査で扱う検討用地震として、下北半島の陸奥湾側を南北に走る「横浜断層」に加え、地下を原発の敷地に近づく方向へ傾斜しながら潜る断層を仮定。多様な分析の一部には、最大加速度が654ガルとなるケースも示された。
 4月の会合で石渡明委員は「おおむね妥当な検討がなされた」と評価。基準地震動の確定へ前進した。
 ただ、審査合格へ一気に突き進めるかは不透明だ。東北電は3月、既に安全審査を合格した女川原発2号機(宮城県)について24年2月の再稼働を目指すと公表。その女川への対応と同時並行で東通の審査を手掛けるため、規制庁側は「東北電がマンパワーを東通にどの程度かけるかによる」(審査チーム員)とみる。更田豊志委員長も「東北電の兵力分配」を、審査が長期化する主要因に挙げた。
 規制委は21年11月、プラント審査の本格開始が可能か模索したが、東北電側は基準地震動と基準津波の確定が先一との見解を示し、山中伸介委員が「今すぐに開始する希望はないと理解した」と引き取った。
 東北電は東通の安全対策工事完了を24年度と掲げるが、再稼働の時期は示していない。停止から11年超。樋口康ニ郎社長は「地域経済に少なからず影響を与えていることを申し訳なく思う。少しでも効率的な審査へ努力する」と述べ、畑中稔朗東通村長は「早期の再稼働に向け、最善の努力をしてほしい」と語った。

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