[2022_06_07_07](第一原発1号機)土台損傷への対策急げ(6月7日)(福島民報2022年6月7日)
 
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(第一原発1号機)土台損傷への対策急げ(6月7日)

 東京電力福島第一原発の1号機で原子炉圧力容器を支える土台の損傷が判明した。大きな地震が再び発生した場合、圧力容器が落下する恐れはないのか。損傷の全容把握と健全性の徹底した評価が求められる。
 圧力容器を収納している原子炉格納容器の底部を遠隔操作の水中ロボットで撮影したところ、コンクリートに覆われているはずの土台の鉄筋がむき出しになっていた。東電は溶融核燃料(デブリ)の熱でコンクリートが溶けた可能性も否定できないとしている。また、土台の健全性が失われれば、圧力容器を支え切れなくなる可能性があると説明する一方で、現状では問題ないとの見方を示す。
 東電が根拠とするのは、二〇一六(平成二十八)年度に国際廃炉研究開発機構(IRID)が公表した耐震性評価だ。土台は円筒状で、壁の厚さは一・二メートル、外周は約二十メートルある。このうち、「開口部」と呼ばれる隙間を中心に全体の四分の一ほどがデブリに侵食されても、東日本大震災の揺れ五五〇ガルを上回る六〇〇ガルに耐えられるとした。
 評価をそのまま受け入れてよいのだろうか。カメラが捉えたのは、開口部の周辺のみで、鉄筋がむき出しになっている部分がどこまで広がっているのか、画像だけで確認するのは難しい。損傷が四分の一以内にとどまっているとは限るまい。
 原子力規制委員会の更田豊志委員長は「土台が崩れるといきなり考えるのはどうかと思うが、損傷程度を詳しく調べるのは大事だ。(程度が)明らかになるにつれて、どの程度損傷したら何が起きるのかといった議論はしておいたほうがいい」と指摘する。土台の損傷は圧力容器の傾斜や落下につながる恐れがある。その場合、今後のデブリ取り出しの難易度が一段と高まるだけでなく、放射性物質が飛散する事態への懸念も拭い切れない。
 東電は損傷の調査を進める考えだが、工程は見通せない。格納容器内の底部は構造物が多く、水中ロボットの行く手をはばむ。高線量によるトラブルも起きている。調査は慎重に進めなくてはならないが、健全性を早期に把握するためにも、迅速に対応してほしい。
 土台は補強しようにも、格納容器内には近づけず、具体的な対策を講じるのは困難だ。有事に備え、作業や環境への影響を抑える方法も検討すべきだろう。専門知識を有する原子力規制委や県は、東電の動向をしっかりと見極める必要がある。(角田守良)
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