[2022_04_19_03]今や世界滅亡への道 核戦争の瀬戸際にある「核抑止論」は核拡散につながる すべての核を廃絶することが生きのびる道 (下) (了) 渡辺寿子(原発いらない!ちば)(たんぽぽ2022年4月19日)
 
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今や世界滅亡への道 核戦争の瀬戸際にある「核抑止論」は核拡散につながる すべての核を廃絶することが生きのびる道 (下) (了) 渡辺寿子(原発いらない!ちば)

        ※(上)は、4/13【TMM:No4456】にて掲載。

6.今や核戦争の危機が現実に迫っている

 2020年8月17日にたんぽぽ舎のメールマガジン【TMM:No4004】に世界の核(兵器)状況について投稿しました。
 以下「  」内はその一部です。
 「アメリカとソ連の間で結ばれ約30年続いたINF(中距離核戦力)全廃条約をアメリカとロシアが廃棄し、2019年8月に失効しました。INF廃棄条約によりともかく無制限な核開発競争が抑えられていたのが、タガが外れ新たに中国を巻き込んだ冷戦時代を上回る新たな世界的な大核軍拡競争の時代に突入してしまったのです。
 アメリカはロシアに対抗して核兵器の高性能化や「使える」小型核兵器そしてミサイル開発に着手しました。通常兵器では欧米に劣るロシアは核戦力に依存し、核の先制使用条件を緩和しつつあります。
 比較的破壊力が小さい、小型の「使える」核の開発・配備が進んでいる現状は世界各地で紛争は頻発している現在、偶発核戦争が起きる危険もはらみ、軍縮よりも使方向に進む、新たな核戦争の危機が世界を覆い始めていると軍事専門家は警告しています」…引用終了

 ロシアがウクライナに侵攻する戦争を始めてしまい、核の威嚇をちらつかせている現在、上記の文章はますます現実味を帯びてきてしまっています。
 国連のグテレス事務総長は3月14日ロシアのウクライナ侵攻について「かつては考えられなかった核戦争が、今では起こり得る」と述べ、強い危機感を表しました。

7.「核抑止論」−核で戦争は防げない
  核を持っても安全にはならない

 核兵器の保有はその法外な破壊力のためにかえって戦争を抑止するというのが核抑止論です。
 核兵器を使用しようとした場合、自国も相手国から核兵器による破滅的な被害を覚悟しなければならず、そのために最終的には核兵器の使用を思いとどまるという論理です。
 米・ロ・英・仏・中の核保有5大国は全部その論理に立ち、日本はそのようなアメリカの核戦略、核の傘の下で守られているというのが政府の立場です。
 現在のロシアのウクライナ侵攻でロシアが核戦争を起こす恐れが高まっています。この機に乗じて日本の核武装推進論者たちは日本も核を持てば安全になるかのような言い方をしていますが果たしてそうでしょうか。

8.「核抑止論」は核拡散につながる

 コロナで延期になっていた第1回核兵器禁止条約締約国会議が6月21日〜6月23日ウイーンで開かれることに決まりました。
 締約国会議の議長を務めるオーストリア外務省のクメント軍縮局長はツイッターでコメントしました。「
 (ロシアの侵攻で高まっている)核兵器の脅威を前に日本を含めた各国で核抑止論を正当化する声が上がっている。そうした議論は核兵器の拡散につながる。
 各国が核兵器を持てば世界はより安全になるのか慎重に考えるべき。(中略)
 核保有国などが現時点で核兵器禁止条約に参加できないのは理解するが核兵器をめぐる真剣な議論に参加しない理由はない。国際社会の責任ある国々が核問題を議論することはますます重要だ」と述べ、核抑止論で核戦争はは防げない。核保有国はオブザーバーとしてでも締結国会議に参加すべきと表明しました。

9.「核抑止論」は平和をもたらさない

 戦略研究家ルトワックは「第二次世界大戦後厳しい東西間の対立が熱い戦争に発展しなかったのは、核戦争に対する恐怖が自制を生み出したからである」としています。
 反対の意見として、国際政治学者ミューラーは「冷戦中に平和が維持された原因は核兵器以外の要因によるものである。第1次及び第2次大戦の記憶が戦勝国と敗戦国双方に強く残ったことなどが核兵器の存在より重要な意味を持った」と論じています。

10.核戦争計画者の検証

 ヴェトナム戦争でのアメリカ国防総省の内部文書「ペンタゴンペーパーズ」の暴露で有名な反戦・反核運動家ダニエル・エルズバーグは、実は1960年代の数年間アメリカ国防総省や政権中枢においてアメリカのソ連との核戦争計画に深く関与していたということを最近告白しました。
 2017年にアメリカで出版された『世界滅亡マシン−核戦争計画者の告白』によって、アメリカの核戦争の戦略とその内実、自らの経験と告白に至る経緯が詳細に綴られました。
 1961年のベルリン危機、1962年のキューバ危機、1965年から本格介入して1975年まで続いたヴェトナム戦争などにおいて核兵器使用の瀬戸際にありましたが、かろうじて回避出来ました。

11.核兵器が存在すること自体が危険

 キューバ危機においてはケネディもフルシチョフも勿論破滅的な核戦争は望んではいませんでした。核抑止論が有効だったようにも見えます。
 しかしエルズバーグの『世界滅亡マシン』でキューバ危機が収束する経緯を詳細に見ていくと、そうとは言い切れません。
 キューバ危機ではケネディもフルシチョフも核戦争を始めないことに決めてはいても、収束に至るまで核戦争が始まりかけたことが何回もあったのです。
 著書によると核のボタンを押す権限は両国のトップ、大統領と首相の手だけにゆだねられているわけではなく、実際は軍部の実働組織に委譲していて首脳が核の不使用を決定していても核戦争は起こり得るとしています。
 平時においても警報システムの誤報で、ソ連のミサイル攻撃進行中とアメリカが認識して核戦争が始まりかけた事態もありました。
 エルズバーグは、「キューバ・ミサイル危機の真実の歴史から明らかになるのは、米・ソという超大国の首脳の手に大量の核兵器が存在することがキューバ危機当時も、そして60年後の今も文明の存続に対する受け入れがたい危険となることにほかならない」と書いています。
 核兵器は存在すること自体が危険なのですから、ウクライナ危機で
見えた核の危機を避けるにはロシアに対抗して核を持つことではありません。

12.すべての核の廃絶が人類を救う道

 その意味で核兵器の開発から生産、保有、使用まで全面的に禁止する核兵器禁止条約が2021年1月に発効したことは大きな意味があります。
 日本は核兵器禁止条約の推進役になるべきです。
 地球全体を何回も壊滅させるほどの大量の核兵器を持ってしまった愚かな人類。
 今こそそのすべてを放棄する時です。
 核兵器は勿論、原発を含めたすべての核を廃絶すること、核そのものをなくす運動にまい進することしか人類と地球を救う道はありません。
 ヒロシマ、ナガサキ、ビキニ、フクシマと4度の核被害を経験した日本はその運動の先頭に立つべきです。
 やるべきことは軍備増強ではありません。
 日本も含め世界中が軍事国家化に走るのを止めなければなりません。
 ロシアの侵攻を止めさせ、第3次大戦になってしまわないよう、反軍備、反核、反戦の動きを高めていかなくてはなりません。
       (「原発いらない!ちば」ネットワークニュース
            2022年4月最終号より了承を得て転載)
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