[2022_04_04_04]「なし崩しで最終処分地に」 核のごみ、米国でも日本と同じ懸念 解決策は見えず(東京新聞2022年4月4日)
 
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「なし崩しで最終処分地に」 核のごみ、米国でも日本と同じ懸念 解決策は見えず

 世界最多の原発が稼働する米国で解決策を見つけられない「核のごみ」処分問題。使用済み核燃料の暫定的な保管場所とされる中間貯蔵施設だが、最終処分のめどが立たない中で「このまま最終処分地となるのでは」との不安は日本と同じ構図だ。核のごみが各原発でたまり続ける姿は、東京電力福島第一原発事故があっても原発を再稼働させている日本と共通している。(米西部ニューメキシコ州などで、金杉貴雄、写真も)

◆「一度事故起きれば、チェルノブイリ」

 「一度事故が起きれば、ここは西テキサスのチェルノブイリになる。子どもたちのため、生まれ育った地域を全米の核廃棄物の処分場にしない」。米テキサス州の西端、アンドルーズ郡で使用済み核燃料などの高レベル核廃棄物の中間貯蔵の候補となっている施設前で、エリザベス・パディーヤさん(33)は訴える。
 運営企業は使用済み核燃料4万トンを全米から受け入れ乾式キャスクと呼ばれる容器で地上保管する計画で、米原子力規制委員会(NRC)が昨年9月に許可。期間は40年だが最終処分地がなければ更新可能だ。
 もうひとつの候補地、ニューメキシコ州リー郡の場合、別の民間会社がNRCに申請した計画では、最大17万トンの使用済み核燃料を1万個の容器で保管する。会社側は「容器は200年以上耐えることができる設計だ」と豪語するが、同郡に住むニック・キングさん(69)は「高レベルの廃棄物を集めたらほかに移そうという意思はなくなり『永久』になる」と懸念する。

◆最終処分地の計画頓挫、「核のごみ」行き場なく

 中間貯蔵施設の計画が浮上している背景には、最終処分地の計画が頓挫し、「核のごみ」の行き場がなくなっていることにある。
 使用済み核燃料は放射能が減衰するまで10万年かかる。米国は連邦法で処分責任は連邦政府にあるとし、1987年にネバダ州のユッカマウンテンを唯一の最終処分の候補地に決定。だが、地元から反対論が起き2010年に許可申請手続きが終了し事実上白紙となり、その後の動きはない。
 米国の使用済み核燃料は約9万トンで世界全体の2割を占め、各原発で保管され続け年2000トンずつ増えている。米議会付属の政府監査院(GAO)の分析では、各原発での保管に関する連邦政府の債務総額は20年段階で約4兆円、10年後には約6兆円に達する。
 このため中間貯蔵施設は各原発から使用済み核燃料を集め保管費用を軽減し、最終処分までの「つなぎ」を担う。だが、州をまたいだ二つの候補地で共和・民主両党の州知事が猛反発し、議会でも施設の設置を禁止する法律を可決もしくは審議を進めている。

◆日本では青森県に 懸念くすぶる地元

 日本では、使用済み核燃料の一部が青森県六ケ所村の再処理施設に運び込まれているほか、同県むつ市には中間貯蔵施設が建設中だ。ただし国の最終処分地は未定で、地元では事実上の最終保管になることへの懸念がくすぶっている。
 米スタンフォード大のロドニー・ユーイング教授は、米国の中間貯蔵施設は「安全面ではなく、増え続ける保管費をなくしたい財政問題が推進の理由だ」と指摘する。元NRC委員長のアリソン・マクファーレン氏は「数百年以上の期間で核廃棄物を人間が監視し続けられる保証はない」と「中間」の長期化による安全性を憂慮し、最終処分地の選定が必要だと強調する。
 最終処分の計画は行き詰まり、それがなければ中間貯蔵施設もできない。広大な国土の米国でも、核のごみが原発にたまり続けるという袋小路に陥っている。

 米国の原発と使用済み核燃料 米国の原発は2010年当時に104基が稼働していたが、日本の福島第一原発事故などの影響もあり、現在は94基で全電力の約20%を占める。米議会は1982年に原発から出る使用済み核燃料の処分の責任を連邦政府とし、98年までに最終処分を開始すると定めたが現在も約束を果たせず、連邦政府は各原発で保管する電力会社に賠償金を支払っている。
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