[2022_03_28_02]福島県外の除染土、仮置き場の解消遠く 宮城・丸森では諦めの声(毎日新聞2022年3月28日)
 
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福島県外の除染土、仮置き場の解消遠く 宮城・丸森では諦めの声

 2011年の東京電力福島第1原発の事故後、福島県外でも大量の除染土や廃棄物が発生した。しかし県境で対応は線引きされ、宮城県丸森町では、事故から11年が過ぎても処分方法は定まらないままだ。今も仮置き場から動かすことができず、保管する地元からは「このまま最終処分地になるかもしれない」と諦めの声も漏れる。
 福島県境に位置する丸森町。町役場から約1キロ離れた6000平方メートルの土地には、除染で出た土や草木が埋められている。町は田畑を掘削して周囲に土手を造り、約1万3000袋の除染廃棄物に遮水シートをかぶせて保管している。
 丸森町内にはこうした仮置き場が25カ所あり、町は地権者と3年間の土地の賃借契約を結ぶ。当初は3年で土地を返す約束だったのに、今月、3回目の延長を迎えた。近くに住む高齢男性は「(除染土を)どうするかって話は聞こえてこない。持って行くとこねえ。諦めてんだ」と漏らす。
 原発事故後、福島以外の岩手、宮城など7県でも計約47万立方メートル分の廃棄物などが出た。福島県内の除染土は帰還困難区域を除いて21年度中に中間貯蔵施設への搬入がおおむね完了する見通しだが、福島県外では仮置き場や民家敷地内での保管が続く。放射性物質汚染対処特措法の基本方針で、処分は発生した県内で行うとされているが、丸森町は「福島同様に東電や国の責任で処分をしてほしい」と訴えてきた。
 丸森町がそう訴えるのは福島県内の自治体並みの被害が出たからだ。原発事故直後の空間放射線量は、国の除染基準値となる毎時0・23マイクロシーベルトを超える数値が町内で測定された。町南部の筆甫(ひっぽ)地区は、全域避難となった福島県飯舘村の目と鼻の先。町が発表したデータによれば、11年5月12日時点で最大毎時1・33マイクロシーベルトだった。研究者らが測定した結果ではこれより高い数値も出ている。
 事故で福島県外にも放射性物質がまき散らされたのに、その後の対応は県境によって大きく分かれた。
 当初、東電が精神的損害への賠償として丸森町民に支払った額は大人1人につき4万円、妊婦と18歳以下の子供には28万円だった。これは福島県内の自主的避難等対象区域の住民に対する賠償額よりも低く、筆甫地区住民約700人は裁判外紛争解決手続き(ADR)を経て、差額分の増額が認められた。
 除染方法も、福島県内のように表土のはぎ取りや高圧洗浄は行われず、丸森町では枯れ葉を除去して雨どいや側溝にたまった土を取り除き、タオルで拭き取っただけだった。除染後も線量が基準値を上回る地域については、町が要望した上で再除染された。
 保科郷雄町長は毎日新聞の取材に「福島と同じ被災地として見てもらえない」と国の対応を批判し、除染土については「法改正をしてでも町外で処分をしてほしい」と強調している。
 環境省は、福島県外で出た除染土の処分方法として埋め立てや公共工事などへの再利用を想定し、周囲の環境に影響がないか検証するため実証事業を進めている。除染土を袋から取り出して遮水シートを敷いた土中に埋め、土中から集めた浸透水の放射性セシウム濃度や空間放射線量を調べ、作業員の被ばく線量などを測定する内容で、これまでに茨城、栃木県内の2町村で行われた。
 実証事業は丸森町の上滝地区でも21年に始まった。山中にある仮置き場には土中から掘り起こされた除染土や枝葉が詰まった袋が山積みにされており、袋の中身を分別した後に埋め直して測定する。ただし結果が出るまでに1年以上かかる見込みだ。町総務課は「実証事業で土を保管しても安全だと証明し、受け入れてもらえるようにしたい」とし、あくまでも町外での処分を求める。
 役場から約1キロの仮置き場は、19年の台風19号でそばにある川が氾濫し、遮水シートが土砂や流木に覆われた。町内では大規模な土砂崩れも発生しており、上滝地区行政区長の宍戸政秀さん(71)は「土砂崩れで除染土が流れて河川に入ったらどうなるのか」と懸念する。
 他の市町村で除染土を受け入れてくれるところが現れるだろうか。そもそも丸森町内の仮置き場が25カ所に分散したのは、他の集落の除染土を受け入れることに住民が反発したからだ。宍戸さんは「国と町が一体となって、何とか話を進めてほしい」と訴える。【高田奈実】
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