[2022_03_11_11]賠償【震災・原発事故11年】東京電力、原賠審指針上回る請求拒否 滞る賠償の支払い 福島県に57.9%、市町村は50.0%(福島民報2022年3月11日)
 
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賠償【震災・原発事故11年】東京電力、原賠審指針上回る請求拒否 滞る賠償の支払い 福島県に57.9%、市町村は50.0%

 東京電力福島第一原発事故に伴う損害賠償について、県は2012(平成24)年7月以降、一般会計分として総額約191億5293万円を東電に請求している。今年2月末までに原発事故に伴う損害賠償と認められ、支払いを受けたのは約110億9577万円にとどまり、支払率は57・9%。政府内に設置された原子力損害賠償紛争審査会の指針を上回る賠償を東電が拒否しているため、支払いが滞る状況が続いている。
 県は人件費、食品の放射性物質検査費、飼料代などの営農関連費などを求めている。
 原発事故に伴い、県内の市町村が東電に求めている損害賠償の請求総額は昨年12月末までに1498億6795万円に上っている。年々積み上がる請求額に対し、支払いは進んでいない。
 県がまとめた、昨年12月末までの各市町村から東電への賠償請求額と支払額は【表】の通り。59市町村のうち、三島町を除く58市町村が請求している。請求に対し、支払いを受けた額は748億9578万円。支払率は請求額全体の50・0%。前年同期の39・0%から11・0ポイント増となり、ようやく請求額の半分が支払われた。
 各市町村は一般会計分では主に、税の減収分、除染対策事業費、人件費、公共財物、放射能測定検査など、企業会計分では上下水道事業や病院事業の逸失利益、人件費などの支払いを求めている。

■JA県協議会には97.1%

 JAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策県協議会は、原発事故発生後から今年2月末までに、農家の休業補償分、風評被害に伴う農畜産物の価格下落に伴う減収分など合わせて約3468億円を東電に賠償請求した。
 このうち、東電からは約97・1%に当たる約3367億円が支払われている。
 原発事故の避難指示区域外の農林業者に対する風評賠償は、基準単価の算定方法を全品目で統一している。東電とJAグループ対策協が合意し、2019(平成31)年1月から採用している。
 原則としてコメ、野菜・果実・花卉(かき)の園芸作物、畜産物などの全品目で、原発事故発生前の基準単価と風評の影響を受けている原発事故発生後の価格の差額分を支払う方式で統一している。原発事故前の5年間の販売価格のうち、最高値と最低値の年を除いた3年間の平均値を基準単価とし、現在の売り上げとの差額を賠償額としている。

■最高裁 東電の賠償責任、初確定 原発避難者ら集団訴訟判決3件 国の責任は夏にも判断

 原発事故を巡る国と東電の責任を問い、避難者らが原告となり損害賠償を求めた集団訴訟で、福島(生業=なりわい=)、群馬、千葉の3件について、最高裁第二小法廷は2日付で東電の上告を退ける決定を下し、国の賠償基準「中間指針」を上回る賠償を命じた二審判決が確定した。全国に約30件ある同種訴訟のうち、最高裁の判断が出るのは初めて。東電の賠償責任が初めて確定した。
 一審、二審で判断が分かれている国の責任を巡っては、4月に予定されている3つの訴訟の上告審弁論を踏まえ、今夏にも出す判決で統一判断が示される見通しだ。
 各訴訟の弁護団は、最高裁判決が全国で行われている損害賠償訴訟や、東電旧経営陣を相手取った株主代表訴訟、元会長ら3人を被告とした強制起訴裁判などにも影響が及ぶと分析。中間指針の見直し、今後の原子力政策の在り方などにも議論が広がる可能性があるとしている。
 集団訴訟について、これまで地裁で23件、高裁で7件の判決が出ており、全ての判決で東電の責任が認められている。

■東電旧経営陣強制起訴 控訴審、6月結審へ

 原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審で無罪となった東電の勝俣恒久元会長(81)ら旧経営陣3被告の公判は昨年11月に東京高裁で控訴審が始まり、係争中。次回の第3回公判が6月6日に開かれ、結審する見通し。
 被告は勝俣元会長のほか、武黒一郎元副社長(75)、武藤栄元副社長(71)。控訴審で検察官役の指定弁護士は一審東京地裁判決に対し、国が2002(平成14)年に公表し、本県沖での巨大津波を予測した地震予測「長期評価」の信頼性を否定した点を「基本的かつ最大の誤り」と主張。3被告は「10メートル超の津波が原発を襲う可能性を認識していたのに対策を講じなかった」として、一審判決の破棄を訴えている。
 一方、3被告の弁護側は長期評価の信頼性を否定した一審判決に「誤りはなかった」と反論。長期評価は専門家の間でも信頼性を疑問視する声が上がっていたと指摘した上で、事故を巡る対策についても「対策は大掛かりで時間を要し、事故前に着手しても間に合わなかった」と主張。改めて無罪を主張し、控訴棄却を求めている。
 勝俣元会長らは第一原発に津波が押し寄せるのを予見できたのに対策を怠り、東日本大震災による津波で原発事故を招き、双葉病院(大熊町)の入院患者ら44人に避難を強いて死亡させたなどとして強制起訴された。

■申し立て1144件 2021年ADR 前年比282件増

 原子力損害賠償紛争解決センターによると、2021(令和3)年の裁判外紛争解決手続き(ADR)の申し立て件数は1144件で、2020年の862件から282件増えた。ピークだった2014(平成26)年の5217件から年々減少傾向にあった。
 同センターは「原発事故から10年の節目を意識した申し立てがあったのではないか」と分析。初回申し立て件数は524件と前年より188件増加し、全体の45・8%と半数近くを占めた。
 原発事故から10年以上が経過した現在も一定の割合を維持しており、センターは潜在的需要や、損害賠償について納得していない人がまだ多くいると考え、周知活動を行っている。
 2021年末の和解成立件数は、累計2万1267件で、和解率は79・8%などとなっている。
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