[2022_03_05_02]ロシアの原発攻撃「国際法に明確に違反」 安保理で非難(日経新聞2022年3月5日)
 
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ロシアの原発攻撃「国際法に明確に違反」 安保理で非難

 【ニューヨーク=吉田圭織】国連安全保障理事会は4日、ロシア軍によるウクライナの原子力発電所制圧を受けて緊急会合を開いた。原発など危険な力を内蔵する施設の攻撃は国際法で禁じられており、理事国によるロシア軍の原発攻撃への批判が相次いだ。
 会合は米国や英国、フランス、アイルランド、ノルウェー、アルバニアが要請し、3月の議長国を務めるアラブ首長国連邦(UAE)が受け入れた。ロシア軍は既にチェルノブイリ原発を占拠しており、原発を主な制圧目標にしていることが懸念されている。
 米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「間一髪で核の大惨事を免れた」と強調した。ロシア軍による欧州最大級とされるウクライナ南部のザポロジエ原発への攻撃を「非常に無謀で危険な行為だ」と非難した。
 英国のウッドワード国連大使は「国家によって稼働中の原発が初めて攻撃された」と警鐘を鳴らした。会合後には記者団に対して「ロシアの行動は国際法やジュネーブ条約の明確な違反だ」と述べた。ケニアの代表は「軍事紛争は続いており、容認できないリスクの高さだ。ロシアにはジュネーブ条約を順守するよう求める」と話した。
 ジュネーブ条約の第56条では危険な力を内蔵するダム、堤防、原子力発電所などの工作物等を戦時下に保護するよう定められている。
 フランスのドリビエール国連大使はオンラインで参加した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長に対して「ウクライナが国内にある全ての施設の安全と保安を保証できるよう全ての手段を使って支持するよう要請する」と述べた。
 一方で、ロシアのネベンジャ大使は「本日の会合で、またもウクライナ政府が人工的なヒステリーをつくりだそうとしている」と話し、「ロシアに対する虚偽情報を広めるキャンペーンの一部だ」と反発した。原発は交渉を通じてロシア軍の管理下におくことで合意したと話した。
 安保理はロシアのウクライナ侵攻を受けて、2月下旬に非難決議案を採決した。しかし、ロシアの拒否権発動で否決した。フランスとメキシコ主導で安保理は人道支援についての決議案の採択を目指しているが、協議の難航で決議採択の見通しは立っていない。
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