[2022_03_04_06]原発避難者3訴訟 東電による14億円賠償確定 国の責任は4月弁論(毎日新聞2022年3月4日)
 
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原発避難者3訴訟 東電による14億円賠償確定 国の責任は4月弁論

 2011年3月の東京電力福島第1原発事故に伴い、他県などに避難した福島県民らが国と東電に損害賠償を求めた3件の集団訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は2日付の決定で、東電側の上告を退けた。3件の2審が国の賠償基準を超えて認めた原告計約3700人に対する総額約14億円の賠償が確定した。全国で約30件起こされた集団訴訟で、最高裁が東電の賠償責任を認めるのは初めて。裁判官4人全員一致の判断。
 また、小法廷は国の賠償責任の有無について、原告側と国の双方の意見を聞く弁論を4月に開くことを決めた。3訴訟の2審判決は、津波の予見可能性などを巡り判断が分かれており、最高裁が夏前にも統一判断を示す見込み。
 3件は福島、前橋、千葉の各地裁に起こされた訴訟。原子力損害賠償法は過失の有無にかかわらず事業者が賠償責任を負うと定めており、仙台高裁は20年9月に福島訴訟の原告約3550人に約10億円の賠償をするよう東電に命じた。東京高裁は21年1月に前橋訴訟の原告約90人に計約1億2000万円、同年2月に千葉訴訟の原告約40人に2億7000万円を支払うよう命じた。古里の喪失に伴う精神的損害も認められるなど、いずれも国の賠償基準「中間指針」を上回る内容だった。
 福島訴訟と千葉訴訟の2審判決は津波の予見可能性などを認めて、東電の賠償額の範囲内で国にも賠償を命じた。前橋訴訟は「津波は予見できなかった」として国の責任を認めなかった。最高裁の弁論は千葉訴訟が4月15日、前橋訴訟が同22日、福島訴訟が同25日に開かれる。最高裁の統一判断は同種訴訟の結論を方向付けることになる。
 原告側は4日に記者会見し、福島県いわき市から前橋市に避難している丹治杉江さん(65)は「東電の賠償確定はうれしい半面、金額は十分とはいえない。最高裁で国の責任が認められると信じている」と話した。東電は「2審判決に従い、対応していく」とのコメントを出した。【近松仁太郎】
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