[2021_12_13_02]原発は「危険」だけど「必要」? 福井県内の高校生、同世代調査(毎日新聞2021年12月13日)
 
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原発は「危険」だけど「必要」? 福井県内の高校生、同世代調査

 原発は「危険」、だけど「必要」? 福井県内の高校に通う同世代の若者たちが原発にどのような意識を持っているのかを調べるアンケート調査を、福井南高(福井市)の生徒たちが実施した。約1800人の回答からは、原発が集中立地する福井の若者ならではの思いが垣間見える。生徒たちは「多くの意見や考えを知ってエネルギー問題に向き合うきっかけにしてほしい」と呼びかけている。【岩間理紀、横見知佳】
 調査を実施したのは、同校3年の雨宮ゆめさん(18)、2年の今泉友里さん(17)、1年の森夕乃さん(15)――の3人。3人は同校の有志でつくる「原子力探究グループ」の一員として活動しており、10月にアンケート調査を実施した。県内の公立と私立高、ろう学校、盲学校、特別支援学校計34校とフリースクールなどの生徒1807人から回答を集めた。回答者の出身地別では県北部(嶺北)79・9%、原発の集中する県南部(嶺南)17・4%、県外2・7%だった。

 「授業」「東日本」きっかけに意識

 調査の結果、日ごろから原発の存在や原発を取り巻く問題について「意識している」としたのは60・6%に上った。「意識し始めたきっかけ」を尋ねると、「授業」28・3%、「東日本大震災」25・4%、「ニュース」16%の順で高く、「家庭環境」と回答した人も7・9%いた。「原発をどの程度知っているか」という別の設問でも「身近な人が原発関係の仕事」5・1%(嶺南のみだと22・3%)、「生活圏内に原発がある」4・7%(同16・2%)で合わせると約1割となり、「福井の特性が現れている」と分析している。
 「原子力のイメージ」を問う質問(複数回答)では、トップが「危険」80・2%(嶺北82・3%、嶺南69・4%、県外87・8%)という結果が出た一方で、「必要」と答えたのが33・5%(嶺北32・8%、嶺南38・5%、県外22・4%)で、「不要」8・3%(嶺北9・1%、嶺南3・5%、県外14・3%)を上回った。
 調査結果を受けて森さんは「原発へのイメージは『危険』がトップなのに『必要』という回答も多いのに驚いた。『危険だが、すぐには切り離せない存在』だと高校生でも感じている人がいる」と述べた。また、「原発については関わりたくない、議論に参加したくないという声もある。『原発を意識していない』と答えた人が約4割いるが、この冊子を通して変えていきたい」と話した。
 「これまでに学校で学んだ原発関連の項目」(複数回答)を尋ねると、「福島第1原発事故」が64・9%で一番高く、「原発の仕組み」61・4%、「原発のデメリット」58%、「メリット」54・1%と続いた。一方で、原発の発電と再処理の過程で生じる「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)」については23・5%、その処分方法となっている「地層処分」については10・4%で、廃棄物処理など発電が終わった後の段階(バックエンド)については、学んだと答える人が少ないことが分かった。

 立地地域が抱える課題に言及も

 調査では自由意見も募った。中には「原発は怖いと思うが、何が怖いかよく分かっていない自分も怖い」「教科書はメリット・デメリットをもっと発信してほしい」といった教育現場への要請などに加え、「事故が起きそうで怖い」「知事には国の言いなりになってほしくない」「身近なのに誰もが議論を避けるような風潮がある」「原発をなくす場合はその人たちの生活のサポートも考えなければいけない」といった立地地域が抱える課題について言及したものも多数あった。
 雨宮さんは「核のごみの問題などはもっと教えてほしいと思う一方で、中立的に扱うのが難しく、授業で取り扱われない部分もあるのかとも感じた」と分析。また、「大人でも解決できていない原発問題に口を出すことに私自身も戸惑いがあった。でも高校生もきちんと考えている。冊子を読んだ人が自分の考えを表現してもいいんだと勇気を出せるようになったら」と話した。
 今回の調査結果は「福井県高校生の原子力に関する意識調査2021」とタイトルをつけ、集計結果に併せて大学教授やジャーナリスト、核のごみの最終処分地問題を抱える北海道寿都町長、神恵内村長ら計23人のコメントを付けて冊子化した。100部を印刷し、生徒が自主的に制作した副教材として、アンケートに参加した高校などに配布する他、国立国会図書館(東京都千代田区)や県立図書館にも送付する。集計結果については同校のサイトでも見られるようにするという。
 編集の中心を担った今泉さんは、冊子の冒頭で「普段、他の高校生とこのような問題で話し合うことはない。しかし、これからの将来を担うのはわたしたち若者だ」と書いた。「同じ高校生でもさまざまな考え方や感覚がある。原発についてもっと学んでいきたい」と笑顔で答えた。
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