[2021_12_06_03]「新規制基準への適合は安全を意味しない」、「どれだけ対策を尽くしたとしても事故は起きるものとして考えるというのが、防災に対する備えとしての基本」など 最近の更田規制委員長の発言から 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕(たんぽぽ舎2021年12月6日)
 
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「新規制基準への適合は安全を意味しない」、「どれだけ対策を尽くしたとしても事故は起きるものとして考えるというのが、防災に対する備えとしての基本」など 最近の更田規制委員長の発言から 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

 ◎ 現時点では全国で8基の原発が稼働している。

 脱原発の立場からみると規制委員会は何だかんだと審査したあげく結局は「合格」を出してしまうので「規制委員会は再稼働推進委員会だ」という批判もある。
 しかし福島第一原発事故のその年の夏には「ストレステスト」だけで再稼働していたことと比べれば、規制委員会が一定の歯止めになっていることは確かだろう。
 むしろ推進側から「規制委員会が審査を引き伸ばして再稼働の妨げになっている」という批判が出ているほどだ。(※1)

 ◎ 最近、規制委員会の更田委員長がいくつか注目すべき発言をしている。

 一つは新規制基準への適合は安全を意味しないという見解である。
 国会の原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会で民主党の逢坂議員の質問に対して「たとえ新規制基準に適合している炉であっても、百テラベクレルを上回るような放射性物質の放出を起こす事故の可能性というのを否定すべきではありません」と答えている。(※2)

 ◎ また原子炉規制と避難計画の関連については、同じく逢坂議員の質問に対して、「しかしながら、どれだけ対策を尽くしたとしても事故は起きるものとして考えるというのが、防災に対する備えとしての基本であります。[中略]
 これが一緒くたになってしまうと、プラントに安全対策を十分に尽くしたので、防災計画はこのぐらいでいいだろうという考えに陥ってしまう危険もあります」として、原子炉規制と原子力防災は分離すべきであるという、東海第二原発差止めの水戸判決を支持するような見解を示している。(同じく※2)

 ◎ さらに緊急事態に際して、現在は原子力災害対策指針で「30kmは原則として屋内退避」が推奨されているものの、更田委員長は「私自身もJCOのときに、家に居てくださいというのを経験しましたので、そのときの経験に照らしても、まあ数日、3〜4日とかがなかなか一般には限界ではなかろうか。[中略]
 それでも1週間屋内退避というのは現実に難しいだろうと思いますし」として、いわば指針の屋内退避方針に疑問を呈するような発言もみられる。(※3)

 ◎ そもそも規制委員会の設置は民主党政権でなければ実現しなかっただろうし、少なくとも規制と推進が一体という福島第一原発事故以前よりはあるていど改善した。
 これも大惨事の中での一つの幸運といえる。
 また更田委員長の発言は、それ自体で再稼働を止める効力にはならないものの各地の原発差止め裁判では役に立つ情報となっている。
(※1)石川和男「世界水準から大幅乖離、過酷さ増す日本の
    原子力規制」JBpress,2019年8月2日
(※2)第204回国会原子力問題調査特別委員会第3号
    (2021年4月8日)
(※3)原子力規制委員会記者会見録(2021年10月6日)
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