[2021_12_01_04]ため池の放射性物質濃度、郡山市が再調査へ 豪雨で流入の恐れ(河北新報2021年12月1日)
 
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ため池の放射性物質濃度、郡山市が再調査へ 豪雨で流入の恐れ

 郡山市が東京電力福島第1原発事故の影響を確認する目的で、市内のため池で放射性物質濃度の再調査に乗り出す。福島県内のため池で基準値(1キログラム当たり8000ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された事態を受けた。原発事故で発生した放射性物質が近年の豪雨で流入したとみられており、関係者は「10年たっても原発事故との戦いが終わらない」と嘆く。
 市内のため池649カ所のうち、再調査の対象は522カ所。市は12月定例会に、泥を採取して濃度を調べる基礎調査費用2億2040万円を計上する。
 基準値超の放射性物質が検出された場合、汚染物質の広がりを調べた上で除染計画の立案、実施と数年を要することになる。
 そもそも原発事故に由来する市内のため池除染には2013年度から9年の歳月を費やし、本年度が最終年。基準値を超えていたため池67カ所の除染はほぼ完了しており「できれば同じ事態の繰り返しは避けたかった」(農地課)というのが市の本音だ。
 県内では南相馬市の阿武隈山中に近いため池5カ所で19年11月、最大11万ベクレルの放射性セシウムが検出された。調査直前に発生した台風19号豪雨により、除染していない山地から大量の土砂が流れ込んだのが原因とみられる。
 山地から離れた平たん地にある郡山市のため池に未除染土の流入は考えにくいが、台風19号で広範囲に浸水被害が発生したことを踏まえ、国との協議で再調査を決めた。他にも複数の県内市町村が再調査を検討している。
 この事態に表情を曇らせているのが、ため池を利用している関係者だ。
 養鯉(ようり)業者は「水質の安全性は確認済み。調査に入ることで風評被害が再燃しないか」と懸念。地元農協の役員は「処理水の海洋放出への対応も抱えて頭の痛い問題ばかり。いつになったら原発事故との戦いが終わるのか」と憤った。

 <取材メモ>
 「10年もたつと、東京の人は原発事故があったことなんて忘れてしまうんですね」。郡山市の嘆きは深い。その訳とは−。
 池の水を全部抜いてお宝を探す民放の人気番組。水不足に苦しんだ時代の名残で649カ所のため池が点在する郡山にも時折、撮影依頼が舞い込む。しかし市は取材を全部断ってきた。
 東京電力福島第1原発事故で放射性物質が検出された池もある。除染で何とか基準値(1キログラム当たり8000ベクレル)以下に抑え込んだが「あくまでも基準値以下。放射性物質がゼロになったわけではない」と市職員。風評被害が拡散しないよう慎重姿勢を崩さない。
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