[2021_09_28_05]「千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見」 約1000年前に発生した房総半島沖の巨大地震によって九十九里浜地域が浸水 産総研の調査で確認された1000年前の巨大津波 (上)(2回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年9月28日)
 
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「千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見」 約1000年前に発生した房総半島沖の巨大地震によって九十九里浜地域が浸水 産総研の調査で確認された1000年前の巨大津波 (上)(2回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎ 1000年前の巨大津波が九十九里浜海岸に

 2011年3月11日以後、日本の沿岸各地において津波堆積物に関する調査が活発に行われるようになった。
 その成果の1つが、9月3日(日本時間)にネイチャー・ジオサイエンス誌に発表された。
 産業技術総合研究所などが房総半島、九十九里浜海岸で1000年前の巨大津波の痕跡を発見した。
 津波堆積物をボーリング調査で調べた結果、海岸線から内陸に3キロ以上も浸水した形跡を発見した。
 津波堆積物は地層の中2箇所で見つかり、そのうち古いほうは推定される津波発生時期の記録が見つかっていない「未知の津波」と考えられる。
 この規模の津波が発生する地震モデルを解析したところ、フィリピン海プレートと太平洋プレートの間のプレート間地震を想定した場合、マグニチュードが8.5で10メートル動いた場合に起こりえると推定された。
 他にも、いくつかのモデルが提唱されており、そのうち最も少ないすべり量では、フィリピン海プレートと太平洋プレートの間のプレート間地震が良く合うという。
 最大のすべり量を計算した場合は、相模トラフと日本海溝のプレート境界を20メートルあるいは25メートル滑らせた場合に発生する津波に相当するという。

◎東海第二原発の地震、津波対策にも大きな影響が

 この論文のもう一つの波及効果は、東海第二原発の地震と津波評価に与える影響だ。
 九十九里浜海岸に内陸3キロもの浸水域を残す津波を発生させた地震が、東海第二原発にどのような影響を与える可能性があるのか、今のところ何の評価もされていない。
 今回の論文に掲載された津波は、東海第二から見ると南から押し寄せることになるだろう。そうすると、東海第二の他にも東海再処理工場にも同程度以上の津波が襲いかかる想定になる。
 再処理工場は海側に常陸那珂火力と国際港湾「常陸那珂港」があるので、ここの船舶やコンテナも同時に流されれば、それらが再処理工場にも東海第二原発にも襲いかかる。
 そうした危険性については、「起こりないこと」として規制委も全く無視している。
 大型船舶や30メートル級の鋼鉄コンテナが次々に衝突すれば、防潮堤も建屋も破壊される可能性がある。
 こうしたリスクを再審査する必要がある。
 東日本太平洋沖地震は、本来想定されるべき地震だった。
 2011年以前には、日本海溝沿いで大規模な地震と津波が発生する可能性は、地震調査研究推進本部により指摘され、これが「長期評価」として2002年には明らかにされていた。
(震本部地震調査委員会 三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について 2002年7月31日)
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/kaikou_pdf/sanriku_boso.pdf

◎ 三陸沖北部から房総沖の海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)の記述は、
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 プレート間のM8クラスの大地震は、三陸沖で1611年、1896年、房総沖で1677年11月に知られている。
 これら3回の地震は、同じ場所で繰り返し発生しているとはいいがたいため、固有地震としては扱わないこととし、同様の地震が、三陸沖北部海溝寄りから房総沖海溝寄りにかけてどこでも発生する可能性があると考えた。
 房総沖の1677年11月の地震については、石橋(1986)は、地震の規模をM6〜6.5と推定しており、もう少し陸寄りに発生した地震である可能性を指摘している。
 しかし、阿部(1999)から、津波地震であることは、確実と思われるので、1611年、1896年の地震と同じような地震であるとして扱うこととする。
 このような大地震の発生頻度は、過去400年間に3回発生していることから、この領域全体では133年に1回の割合で発生すると推定される。
 ポアソン過程を適用すると、この領域全体では今後30年以内の発生確率は20%程度、今後50年以内の発生確率は30%程度と推定される。
 また、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの特定の領域での発生頻度は、断層長(約200km)と海溝寄りの領域全体の長さ(約800km)の比を133年に乗じ、530年に1回程度の発生頻度であると推定した。
 ポアソン過程を適用すると、特定の領域では今後30年以内の発生確率は6%程度、今後50年以内の発生確率は9%程度と推定される。
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 というものだった。

◎ 地震本部の警告に対して何の対策もせず、漫然と福島第一原発事故を起こすに至った東電の当時の経営陣に対して、刑事裁判としては「双葉病院の入院患者等に避難行動を余儀なくさせ死に至らしめた、業務上過失致死傷罪」。
 また株主代表訴訟では、地震対策を取らず、少なくても22兆円もの被害を生じる原発震災を引き起こし、その賠償責任を負うことから、経営陣への賠償責任も問う「会社への損害に対する損害賠償を求める株主訴訟」がそれぞれ提起されている。
 なお、論文の日本語解説は産総研のホームページに「千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見」
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2021/pr20210903/pr20210903.html
として掲載されている。
 是非、原本を読んでいただきたい。(下)に続く
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