[2021_09_25_03]六ヶ所再処理工場のアクティブ試験で放出されたトリチウムは福島第一原発の2.5倍〜5倍 本格運転でいったいどれだけ汚染水が放出されるのか 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年9月25日)
 
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六ヶ所再処理工場のアクティブ試験で放出されたトリチウムは福島第一原発の2.5倍〜5倍 本格運転でいったいどれだけ汚染水が放出されるのか 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 ◎福島第一原発からの汚染水海洋投棄が問題になっているが、もう一つ忘れてはならないのが再処理工場からの排出だ。
 再処理工場では使用済燃料を裁断し硝酸に溶かす。いわばデブリと同様に、ペレットや燃料被覆管の「壁」を壊してしまう。そのことが汚染を引き起こすことに、余り関心が持たれていないように感じられる。
 もちろん、再処理工場からもトリチウムが桁違いに放出されるので、この汚染の拡大が気になる。
 六ヶ所再処理工場で扱う放射能の影響の大きさは、トリチウムを含む多種多様の放射性物質が環境中に流れてくる。
 六ヶ所再処理工場から放出される量は、福島第一原発のタンクから最大30年かけて放出される計画の総量約860兆ベクレルの約2.5倍に達すると想定される。
 既にアクティブ試験(核燃料を実際に再処理して行われた試験操業)中の2007年10月には、1ヶ月で523兆ベクレルを海洋放出している。福島総量の約6割に達する量だ。

放出「管理目標値」とは?

 ◎六ヶ所再処理工場でもトリチウムは回収されず全量放出される。そのため、トリチウムの液体放出「管理目標値」は、処理される使用済燃料中のトリチウム全量が液体として海に放出された場合の値ということになっている。
 「管理目標値」という用語は、放出量を減らすための何らかの処理をしているかのように捉えられるかも知れないが、実際にはトリチウムに関しては「存在量」そのものだ。
 トリチウムの分離回収技術は存在しているし、高度化することも可能だが、コストが掛かる、核燃料サイクルの費用がかさめば電気料金にも跳ね返るので、そのまま放出することにしている。希ガスのクリプトン85や炭素14も同じように全量放出だ。
 トリチウムの液体放出「管理目標値」は2018年、それまでの1京8000兆ベクレルから9700兆ベクレルに引き下げられている。
 トリチウムの存在量は、燃料がどのくらい燃やされたかという「燃焼度」と炉から取り出してどれだけの時間が経ったかの貯蔵期間で変化する。
 トリチウムは半減期が12.32年と比較的短いので、長期保管すれば減少する。
 変更は、日本原燃の「事業指定申請書」で「基準燃料」の設定を変更したことによる。
 つまり「平均燃焼度45,000MWd/tU」の使用済燃料を4年間冷却後再処理という想定から、同じ燃焼度の燃料を15年間冷却後再処理としたのだ。
 再処理工場の完成が大幅に遅れ、貯蔵している燃料体の保管期間が長くなったことで、トリチウムの量が減ったというわけだ。

再処理が自民党総裁選挙の争点になった?

 ◎核燃料サイクル事業について、自民党総裁選挙で「争点」になっている。
 具体的には河野太郎規制改革担当大臣が、他の三候補とは異なり、核燃料サイクル政策を見直すべきと発言している。
 そのおかげで、いままでほとんど報道されてこなかった再処理工場と核燃料サイクル政策が話題になったことは大きい。
 例えば『核燃料サイクル、河野氏「なるべく早く手じまいすべきだ」 岸田氏、高市氏は維持を主張』(東京新聞9月22日)
 河野大臣は、経済性を問題にして再処理を含む核燃料サイクル政策を止めるべきとしているようだが、放射性物質の拡散の観点からも、運転せずに廃止することが必要だ。
 このような視点からの再処理中止、核燃料サイクル政策の終了を与野党も共同で(元々立憲民主党や社民党、共産党は核燃料サイクル政策に反対だ)進めるべき時だ。
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