[2020_12_11_11]原子力規制委の更田委員長が川内原発周辺首長らと意見交換(産経新聞2020年12月11日)
 
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原子力規制委の更田委員長が川内原発周辺首長らと意見交換

 原子力規制委員会の更田豊志委員長は11日、九州電力川内原子力発電所が立地する鹿児島県薩摩川内市で開かれた地元自治体の首長との意見交換会で、「規制委も電力会社も(原子力の)信頼回復は半ばだ。説明する努力を続ける」と強調した。12日には、新たに完成したテロ対策を目的とする特定重大事故等対処施設(特重施設)などを視察する。(中村雅和)

■環境の変化

 更田氏が前回、同市を訪れたのは、特重施設が建設中の今年2月だった。その後、川内原発を取り巻く環境は大きく変わった。
 県知事は平成28年に反原発団体の支持も得て当選した三反園訓前知事が7月の知事選で落選。代わって経済産業省出身の塩田康一氏が就任した。塩田氏の原発に対するスタンスは「今のところニュートラルと言えるのではないか」(電力業界関係者)との評価だ。
 薩摩川内市長も、川内原発の再稼働に同意した岩切秀雄市長が勇退し、10月の市長選を勝ち抜いた田中良二新市長に代わった。
 両氏とも規制委との意見交換会の出席は初めてで、いずれも国内の原発で初めて運用が始まった特重施設をテーマに挙げた。
 塩田氏は「普段使用する施設ではない。有事にいかに機能するのか」と問題提起。更田氏は「机上も含め万が一に備え訓練することが重要だ。恐らくは(施設の)寿命中に使うことがないと思われる施設だが、どれだけ現実感をもって、対処できるか考え続ける」と応じた。
 田中氏は特重施設完成後の原子力防災訓練のあり方について質問した。更田氏は「(深刻な事故の際)防ぐ手立てがどんどん厚くなっている。炉心が溶けても外部に(影響が)出てくるのが遅くなるケースも視野に入れるべきだ。避難などのタイミングが変わってくることもある」と述べた。

■40年問題

 原子炉等規制法上、原発の運転期間は原則40年とされ、1回に限り最大20年の延長が可能だ。川内原発は1号機が令和6年7月、2号機は7年11月に運転40年の節目を迎える。周辺自治体では、九電による延長申請の可能性や、その後の審査について関心が高い。2月の前回訪問時、更田氏は「技術的に大きな懸念はない」と踏み込んだ発言をしていた。
 ただ、意見交換会では「あくまで九電が意図、計画を表明してからだ。当然、厳正に評価、確認して判断する」と述べるにとどめた。また東日本大震災後の長期停止期間中を、運転期間から除外するといった算定方法の変更などについては「制度そのものは、立法府のご議論だ」として具体的な言及を避けた。

■コミュニケーション

 更田氏は2月の前回訪問時、特重施設の建設遅れに対し「(規制委と電力会社)双方の反省材料だ。お互いコミュニケーションに欠けた所があった」と述べていた。その後、川内原発では特重施設が建設期限に間に合わず、一時停止を強いられた。11日、記者団からこの後のコミュニケーションの進展について問われ、「徐々に形になりつつあるのではないか」と応じた。
 原発をめぐっては関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について、大阪地裁が4日、規制委による地震規模想定などに誤りがあるとして、設置許可を取り消す判決を下した。
 意見交換では、塩田氏からこの問題への考えを問われた更田氏は「司法と解釈が異なったのは大変残念だが、私たちはそれぞれの判断に自信を持っている。今後の判断に影響を与えるものではない」と述べた。
 また、同問題について記者団の質問に対しては「司法が独立した(立場から)判断を下す前の説明が尽くせなかった。反省はしている」と述べた。
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