[2020_12_09_04]福島第1原発処理水処分、政府腰重く 政治日程にらみ年内決着も(河北新報2020年12月9日)
 
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福島第1原発処理水処分、政府腰重く 政治日程にらみ年内決着も

 東京電力福島第1原発でたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水を巡り、処分方法を決める最終段階で政府の動きが見えなくなっている。当初は10月27日の決定を目指したが、風評被害の再燃を懸念する世論の反発を受けて直前に先送りした。関係省庁は政治日程をにらみつつ方針表明の時期を検討しており、今月下旬にも決着するとの見方が浮上している。

◎風評被害対策の検討続く
 梶山弘志経済産業相は8日の閣議後記者会見で「関係省庁と話は続けており、進めるべきものは進める。適切な時期に責任を持って判断したい」と述べた。
 政府は当初、10月27日に海洋放出方針を決定する青写真を描いた。風評対策の具体化は先送りする方向で調整。同8日に関係者からの意見聴取が終わったのを受け、早期決着を図った。
 「10月決定」の見通しが報道されると地元の空気は一変し、「議論が不十分」と批判が噴出した。全漁連の岸宏会長は経産、農林水産など関係4省庁を2日間で回り、各大臣に「風評被害は必至だ。日本の漁業の将来に大きな禍根を残す」と慎重な議論を迫った。
 「このままでは持たない」(関係者)と政府は10月の決定を見送った。梶山氏は同23日、風評被害対策の具体化を関係省庁に要請。以降は国内外への情報発信や販売促進策などを協議しているとされる。
 東電によると、敷地内の処理水タンクは2022年9月ごろに満杯となる。処分方法決定から実行までは準備に2年程度かかり、逆算すると決定期限は既に過ぎた。東電は「かなり切迫した状況だ」と強調する。
 延期された方針の決定を巡り、「年内に決まる」との見立てが関係省庁で強まりつつある。野党から追及される可能性がある国会の会期中を外し、来年の解散総選挙への影響を最小限に抑えるためという。
 来年度予算案の編成と同時期に重要政策を打ち出すのは「霞が関の慣例」(政府関係者)。経産省幹部は6日、取材に対して「未定だが、今月中に政府方針を表明する可能性はある」と話した。
 既に固まっている政府の海洋放出方針は変わらない見通し。風評対策は各省庁による協議後も一定の方向性を示すにとどめ、具体的な内容は水産業など関係機関で構成する検討組織に委ねるとみられる。
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