[2020_11_07_02]【廃炉の現場】(3)第1部デブリ取り出し 1号機「未知」の領域 開始時期決まらず(福島民報2020年11月7日)
 
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【廃炉の現場】(3)第1部デブリ取り出し 1号機「未知」の領域 開始時期決まらず

 二〇一七(平成二十九)年三月、東京電力による福島第一原発1号機の原子炉格納容器の調査は、思うような結果を得られなかった。格納容器の底部にある溶融核燃料(デブリ)の状態を把握するため、ロボットを投入した。一メートル近くに上る金属などの成分を含んだ堆積物が存在し、行く手を阻んだ。東京電力の担当者は力なく語った。「想定外だった」
 炉心溶融(メルトダウン)が起きた1〜3号機の中で、1号機はデブリの詳細な情報が得られていない。地震による津波の直後に注水が停止し、ほとんどの燃料が格納容器底部に溶け落ちたとみられる。格納容器の中心部には圧力容器を支える土台があるが、デブリが相当な量あるとみられる土台内側の状況は分かっておらず、取り出し開始時期は決まっていない。
 廃炉に携わる研究機関や行政の関係者は1号機のデブリ取り出し作業について、口をそろえる。「いまだ『未知』の領域」

■格納容器底部

 二〇一五年、宇宙線の一種「ミュー粒子」を使った調査が1号機で行われた。ミュー粒子の反発を分析し、格納容器内のデブリの位置や量を調べるためだ。関係機関の推計では、デブリの総量二百七十九トンのうち、九割以上が格納容器底部にあるとされている。
 東電などは、今年度後半に新しいルートで改めて格納容器内部、さらには圧力容器を支える土台の内側を調べる予定だ。
 現在、格納容器の内部は水で常に満たされ、“冷温停止”状態を保っている。潜水機能付きボート型ロボットは複数の種類を開発した。カメラで内部を把握し、超音波で堆積物の厚さや形状などを計測する。ウランから発せられる中性子の流れを測定し、デブリの位置の特定も目指す。全体で数カ月かけるこれまでにない規模の調査になる見通しだ。
 東電などは操縦の訓練を重ねているが、事故で様相が変わった内部は不明な部分が多い。国際廃炉研究開発機構(IRID)関係者は「圧力容器の真下に当たる土台の内側など中心部に入れない事態も想定される」と不安を明かした。

■浸食

 東電などは1号機のデブリ取り出しについて、燃料の大半が溶け落ちている格納容器底部の状況把握が、鍵を握ると予測する。
 デブリの上にある堆積物は厚い場所で一メートル近くに上っていると推計される。堆積物は「砂状」「柔らかい」との見方があるが、映像だけが主な判断材料で、研究者間で詳細なデータが必要とされている。放射性物質の量次第では、除去や搬出で、より慎重な作業を求められる。
 事故直後、核燃料は核分裂を繰り返して高温になった上、再び冷却されるまでに時間を要した。底部のコンクリートと放射性物質が反応を起こした可能性は高く、コンクリートへの侵食程度も見通せない。
 原子力関係の有識者は「デブリのコンクリートへの侵食度合いによって作業の工程、難度は大きく違ってくる。格納容器に損傷を与えず、調査、取り出しをする技術、作業手順も不可欠だ」とした。侵食の状態をいかに正確につかむか。廃炉に向けた重要な課題として浮かび上がる。
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