[2020_10_28_04]核ごみ 根強い不安 全道調査「反対」66% 都市部と町村で開き(北海道新聞2020年10月28日)
 
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核ごみ 根強い不安 全道調査「反対」66% 都市部と町村で開き

 北海道新聞社の全道世論調査では、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査実施への反対派は66%に上り、多くの道民が核のごみを地中に埋める地層処分の安全性に疑問を感じていることが浮き彫りになった。11月中旬にも文献調査が始まる寿都町と神恵内村のある後志管内では警戒感は特に強い。一方、財政難にあえぐ町村部は都市部に比べ、国から多額の交付金が得られる処分場選定調査の実施を容認する傾向が高いこともうかがわれた。
 政府は核のごみを処分するため、日本のどこかに地下300メートル以上の深い穴を掘って埋める地層処分を計画している。文献調査は、この計画の第1段階に当たるが、全道では寿都、神恵内両町村で文献調査が行われることへの反対派は賛成派の2倍を超え、反対理由では地層処分の「安全性に疑問がある」が37%で最も多かった。
 職業別では、特に農家や漁業者が安全性に疑問を感じており、最終処分場の建設場所に適しているとされる沿岸部の多い胆振、釧路、留萌管内などで不安の声が目立った。
 核のごみの地層処分計画への賛否でも、反対派(62%)が賛成派(35%)を上回った。特に後志管内の反対派は約7割に上った。寿都、神恵内両町村の動きを受け、処分場建設を現実的な問題としてとらえた人が増えたことで他の地域より反対の声が強まったとみられる。
 人口規模別にみると、札幌市や人口10万人以上の中都市では地層処分計画への反対派が60%超だったのに対し、小都市や町村部では50%台とやや低かった。居住する市町村が処分場を誘致することへの賛否についても、全道では「反対」と答えた人が64%だったのに対し、町村部は半数にとどまった。「処分場誘致につながらない調査までなら賛成」すると答えた人も全道平均の2割に対し、町村部では3割とやや多かった。
 核のごみ問題を巡り、寿都、神恵内両町村はどの段階まで取り組みを進めるべきかという質問についても、全道では「文献調査もやるべきではない」が最も多かったが、町村部で最多となったのは地下施設を設けて約14年かけて試験などを行う「第3段階の精密調査まで」だった。調査に伴う巨額の交付金の存在が財政問題に悩む町村部の住民世論に影響を与えた可能性もありそうだ。
 一方、鈴木直道知事は当初、核のごみを「受け入れ難い」とする道の核抜き条例を根拠に文献調査実施に反対したが、両町村の動きを止められなかった。同条例の改正については「今のままで良い」が、全道では3割と最多だったが、町村だけでみると「もっと柔軟な内容に改正すべきだ」が最も多く、自治体の裁量拡大を求める傾向も表れた。(小林宏彰、川崎学)
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