[2020_10_20_09]女川原発再稼働の是非、30キロ圏内の5首長に温度差(河北新報2020年10月20日)
 
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女川原発再稼働の是非、30キロ圏内の5首長に温度差

 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、原発30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)にある5市町の対応に注目が集まっている。事故時の広域避難計画について「住民の安全の実効性が確保されていない」との意見が大勢を占める一方、再稼働の是非は「容認」と「反対」で温度差が激しい。5人の首長は11月上旬にも会合を開く方向で調整しており、踏み込んだ議論ができるかが焦点となっている。
 UPZ首長会議を構成しているのは登米、東松島の2市と、涌谷、美里、南三陸の3町で、東北電と2015年に「安全確保に関する協定」を締結している。立地自治体にある「事前了解権」はないものの、再稼働につながる設備変更時には、県を通じて東北電に意見を述べられる立場だ。
 締結時から一貫して「再稼働反対」を唱えているのは、相沢清一美里町長。
 相沢氏は女川町、石巻市の両議会が9月に再稼働に「同意」したことについて「残念だ。ただ根底には絶対安全ではないという不安があっての採択で、もろ手を挙げての賛成ではない。苦渋の決断のはずだ」と推し量る。
 前町長の死去に伴い昨年5月に初当選し、初めて会合に臨む遠藤釈雄涌谷町長は、賛否を明らかにしていないが、前町長と違い「脱原発」にかじを切り始めた。
 遠藤氏は「これまで再稼働の説明会で安全について聞いてきたが、100パーセントとか絶対はない。事故が起こったらUPZ圏内も今の生活を捨てて逃げなければならず、不安やリスクはある」と吐露する。
 「再稼働は目先の話。原発は永久的なエネルギーではないという前提に立ち、長期的な視野で代替エネルギーへの転換を考える必要がある。10、20年後に稼働を延長させることには反対だ」と言う。
 一方、「容認」の姿勢を示しながらも避難計画の問題点を指摘するのは佐藤仁南三陸町長。「東日本大震災クラスの大地震が発生し、地震と津波の複合災害が起きたら今の避難計画では完璧というわけにはいかない」と不安をのぞかせる。
 渥美巌東松島市長は「立地自治体の意見を尊重した立場で臨む」とした上で、「再稼働についての意見を統一できるかが課題だ」との見解を示した。
 代表幹事の熊谷盛広登米市長は、5日の定例記者会見で「再稼働の是非については立地自治体と県の判断が一番大切。議題にするまでは考えていない」とした上で「5人の考えはそれぞれ違う。一致できるところと、そうでないところがあるが、首長の意見は重い。多様な意見があることを県に伝える」と話している。
河北新報
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