[2020_10_20_07]コロナ禍の「さようなら原発」首都圏集会 日比谷野音に約1300人(週刊金曜日2020年10月20日)
 
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コロナ禍の「さようなら原発」首都圏集会 日比谷野音に約1300人

 「ようやく、会えましたね。あなたに会えてよかったです」
 東京電力福島第一原発事故から10年目に入った今年、コロナ禍で一時は開催そのものも危ぶまれていた「さようなら原発」首都圏集会(9月18日夕、東京・日比谷公園大音楽堂)は、呼びかけ人の一人である作家・落合恵子さんのそんな言葉で始まった。
 再び政権を放り出した安倍晋三前首相について落合さんは「いかに無責任で無恥で、市民に対して鈍感だったかを、このコロナ禍で再確認できた」と総括した。何一つ終わっていない福島原発事故を例に「責任があると言いながら責任を取らない人を7年8カ月許してきたのは私たちかもしれないという忸怩たる思い」を吐露しつつ「誰かの体調が悪くなったことを喜ぶほど私たちはクズではない。元気でいて、罪を償え」と宣言。菅義偉新首相には「(安倍政権を)踏襲するなら(原発事故の)負の遺産も踏襲せよ」と迫った。
 福島県南相馬市から横浜市に避難している福島原発かながわ訴訟原告団長の村田弘さん(77歳)は、国と東電が「東京五輪を名目に事故は終わったことにするために被災者への住宅提供を打ち切り、除染もせず避難指示を解除し、賠償を打ち切って被災者を追い詰めている」と批判。避難者を出身地に戻らせる「帰還政策」から、国の方針に従わない者を切り捨てていく「棄民政策」に「いま大きく転換しつつある」と強調した。

【都心「サイレントデモ」も開催】
 日比谷野音は座席数2653席だが、主催者はコロナ対策として入場者数を半分の1300人に制限。参加者の間に一つずつ空席を置いた。が、久しぶりの脱原発大規模集会だけに「忘れない」「終わらせない」「許さない」という人たちが予想以上に次々と集まり、一部会場に入りきれない人たちはデモで合流。落合さんやルポライターの鎌田慧さんを先頭に、300人規模の5隊列に分かれ、銀座方面を1時間以上にわたって練り歩いた。ここでもコロナ対策で、意思表示の中心はプラカードやボード。それらを掲げての静かな「サイレントデモ」となった。
 「さようなら原発」集会は福島原発事故のあった2011年9月に東京・明治公園で初めて、空前の約6万人が集まって以来、毎年開催されてきた。第1回集会では福島県田村市の元養護学校教師、武藤類子さん(67歳)が「分断を超えてつながろう」という感動的なスピーチ「福島からあなたへ」を行ない、世界中に配信された。が、武藤さんも今年は、コロナ禍で自宅で過ごさざるを得なかった。
 筆者の取材に武藤さんは「『復興五輪』がいつの間にか『コロナ克服五輪』となり、私たち原発事故被害者までも、加害者による『ふりむくな、前を向け』キャンペーンの一翼を担わされているかのようだ。東電や電通などの巨大利権構造に抗わなければ私たちの健康も命も尊厳も奪い取られてしまうのではないか」との危惧を語った。

(本田雅和・編集部、2020年10月2日号)
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