[2020_09_04_07]中間貯蔵「合格」 むつ−現状と課題(1) 「第2再処理」 搬出先の議論進まず 「核燃料置き去り」懸念も(東奥日報2020年9月4日)
 
 「恐れるのは、出て行く先がない状態でキャスク(燃料を収納する金属製の容器)の耐用年数が近づく事態だ」。原子力規制委員会が使用済み核燃料中間貯蔵施設について安全審査の事実上の合格証に当たる「審査書案」を了承した2日、更田豊志委員長は会見で、規制当局の立場から懸念を示した。
 2005年10月、県、むつ市、東京電力、日本原子力発電は「使用済み燃料は、貯蔵期間の終了までに貯蔵施設から搬出するものとする」との協定を締結。貯蔵期間は最長50年とされているが、具体的な搬出先についての議論が進んでいないのが現状だ。
 「使用済み核燃料は全量再処理する」との国策を前提として当初、搬出先として挙げられていたのが、日本原燃・六ケ所再処理工場に続く、いわゆる「第2再処理工場」だった。六ヶ所工場の操業は40年程度とされ、燃料をむつから搬出するころには次の工場が稼働している−とのシナリオが根底にあった。
 05年10月、三村申吾知事は閣僚らに第2工場の検討に向けた技術研究開発の取り組みを確認、「政治家同士の約束は重い」と立地受け入れを決断した。
 協定締結の直前、国の原子力委員会が決定した原子力政策大綱では、貯蔵後の燃料の処理は「六ヶ所工場の運転実績等を踏まえて10年頃から検討を開始する」と記載。続く06年の経済産業省の原子力立国計画は、高速増殖炉サイクルの実用化へ向け「六ヶ所工場の操業終了時頃(45年頃)に第2工場の操業を開始し、回収されるプルトニウムは高速増殖炉で再利用する」との基本シナリオを絡げた。
 国の方向性をなぞるように技術的な検討も行われたが、11年の東電福島第1原発事故で状況が一変、いつしか第2工場の文言は文書から消えた。
 燃料の搬出元となる東電、原電の原発も停止を余儀なくされ、再稼働の見通しは立たない。むつに搬入する緊急性や意義は薄れてきたのでは−との指摘も聞かれるようになった。
 今年6月、同市を訪問した梶山弘志経産相は搬出先について問われ「事業者が適切に判断する」と述ベた上で、「第2再処理(工場)というようなものについて、現時点で具体的に定まった方針はない。従来の方針の中で検討していかなければならない大きな課題だ」と説明した。だが、国のある幹部は数十年先の原発の稼働状況が見通せないとして「検討材料がない」と内実を語る。
 施設受け入れの是非を巡り議論が巻き起こった00年代から、燃料が置き去りにされるのでは−との不安が地元につきまとった。十数年を経ても、その懸念は解消されていない。核燃料サイクルに詳しい長崎大の鈴木達治郎教授は「全量再処理政策の下では搬出先は再処理施設しかない。六ヶ所工場が動かないと、むつへの搬入が難しくなる」と指摘。搬入を可能にするには、搬出先が再処理以外にもあることを示す必要があり、選択肢に「直接処分」が認められるベきーとするとともに「最終処分地の見通しが立っておらず、その場合は国が責任を持って次の貯蔵場所を確保するなどの約束が必要になる」と持論を述べた。
 リサイクル燃料貯蔵(RFS)は搬出先について「両社(親会社の東電ホールディングスと原電)に引き渡し、両社がサイクル政策にのっとり再処理する」と説明。原電は「国内事業者で再処理することが原則」、東電HDは期限までに搬出するとした上で「数十年先の話で、現時点で搬出先は特定できない」と取材に答えた。(本紙取材班)

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 むつ市の中間貯蔵施設が安全審査で事実上の合格を得た。中間貯蔵事業を巡る現状、課題を探る。
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