[2020_08_20_04]知事「寿都町は慎重に」、一転「拙速だ」 核ごみ調査 道の要請拒否され、対決姿勢鮮明に(北海道新聞2020年8月20日)
 
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知事「寿都町は慎重に」、一転「拙速だ」 核ごみ調査 道の要請拒否され、対決姿勢鮮明に

 鈴木直道知事が、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査への応募を検討する後志管内寿都町に厳しい姿勢を強めている。当初は核のごみを「受け入れがたい」とする道条例を持ち出し「慎重な対処」を求めるにとどめたが、18日には「拙速だ」と批判。背景には「国策」を理由に道の要請を袖にする町側の姿勢があり、「暴走」を止めるには対決姿勢を明確にして世論を味方につけることが不可欠だとの政治判断もあるとみられる。
 「10万年にわたって影響が出るかもしれない問題を1カ月で判断することは拙速だ」。知事が18日に発した寿都町への苦言は、土屋俊亮副知事と片岡春雄町長の14日の会談が引き金となった。
 核抜き条例には市町村の文献調査応募をやめさせる効力はなく、道は当初、町との協議を通して応募自粛を促すシナリオを描いた。
 しかし、町長は14日、町役場を訪れて条例順守を求めた副知事に「最終処分場の選定は国策なので、道は(町ではなく)国と協議すべきだ」と指摘。道との協議を事実上拒否し、あくまで9月中に独自に判断をする姿勢を曲げなかった。
 「道の意向を無視」(道幹部)するような対応に直面し、道庁内では「このまま放置すれば、交付金欲しさに他の市町村も文献調査に手を挙げてしまう」との懸念が広がった。
 そればかりか、寿都町のペースで物事が進めば、ただでさえ強制力のない核抜き条例が一段と骨抜きにされかねない。知事が姿勢を強めたのは、寿都町の独断専行を封じるには「世論の共感を得る」(道幹部)ことが必要だとの政治判断もあったとみられ、18日には「多くの道民も同じ思いでは」と繰り返した。
 ただ、何十億円もの交付金で調査に応じる自治体を募る国の姿勢について「頬を札束でたたくやり方」と批判したことで、国との関係もぎくしゃくしかねない。財政破綻で国に箸の上げ下ろしまで指示されて予算を組まざるをえなかった夕張市の市長時代の厳しい経験がこうした批判に向かわせた面もあるが、国と町との間に立っていかに問題を着地させるか政治手腕の真価も問われそうだ。
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