[2020_08_14_03]処分地選定は難航必至 地元合意形成の壁厚く 核のごみ(時事通信2020年8月14日)
 
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処分地選定は難航必至 地元合意形成の壁厚く 核のごみ

 使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地について、北海道寿都町が選定調査への応募を検討していることが13日、判明した。
 経済産業省によれば、他にも関心を示す自治体があるという。増え続ける核のごみの処分問題解決を急ぐ政府は前進と受け止めるが、町民や周辺自治体の合意形成の壁は厚い。処分地選びは今後も難航が予想される。
 全国の原発の敷地などに貯蔵されている使用済み核燃料は今年3月末時点で計約1.9万トンに達し、貯蔵可能な2.4万トンの約8割に達している。政府は候補となり得る地域を示した全国地図「科学的特性マップ」を2017年に公表したが、応募した自治体はない。
 応募の検討理由として、寿都町は人口減少が進む中での財源確保を挙げている。同町は7月、最終処分地の選定作業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)の勉強会に参加。選定調査の第1段階となる、地質図や論文などに基づく文献調査を受ければ、20億円の交付金が得られることを説明されたという。
 8月13日、取材に応じた梶山弘志経産相は「国として大変ありがたいこと」として、一歩前進との認識を示した。
 一方、高レベル放射性廃棄物の持ち込みは受け入れ難いとする条例を制定している北海道では、鈴木直道知事が「条例を順守しなければならない」とのコメントを発表。核のごみを半永久的に受け入れることになる寿都町民や周辺自治体の同意を取り付けるめどは現時点で全く立っていない。
 このため、梶山氏は「文献調査は次に進むのが前提ではない」として、受け入れを求めるものではないとも強調した。07年に高知県東洋町が最終処分場の立地調査に応募したが、反対が強く、町長選で推進派が敗れて撤回に追い込まれた。経産省では、慎重に手続きを進めたいとの思いが強い。
 エネルギー政策に詳しい国際大大学院の橘川武郎教授は「処分地の選定には住民の合意形成だけでなく、長期的な地殻変動の考慮など技術的な検討も必要。一つの自治体が応募を検討しただけで進展が期待できることはなく、選定には今後も困難が予想される」と指摘した。
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