[2020_07_31_06]核燃サイクル Q&A解説(2) 原発と異なる事故想定 審査の長期化懸念(東奥日報2020年7月31日)
 
 日本原燃再処理工場に関する原子力規制委員会の審査会合は113回、6年半に及びました。原発と事故想定が異なり審査の先例がないことも一因です。今後も詳しい工事計画の審査が続き、原燃が日標とする2021年度上半期の工場完成は難しくなっています。

 Q 原発との違いは。
 A 原発は原子炉内の燃料を核分裂が連鎖的に起こる臨界状態にし、発生する熱を電気に変えますが、再処理工場に原子炉はなく、発電もしません。核燃料を再処理(化学処理)する工程は複雑で、複数の建屋が配管などでつながっています。建屋内は処理に使う貯槽などを収納した小部屋に仕切られていて、廃液や粉末などの形状で、さまざまな場所に放射性物質が存在しています。

 Q 再処理工場で想定される事故とは。
 A 大きな被害をもたらすものとして、高レベル放射性廃液の貯槽が冷却機能を失った結果起こる「蒸発乾固」があります。廃液が沸騰して溶媒が蒸発する際に、大量の放射性物質が外部に漏えいする事故です。原燃は、冷却機能の強化に加え、蒸気を液体にして回収する機器やフィルターを設置し、事故時の放出量を抑制する方針です。

 Q 過去の事例は。
 A 国内外の他の施設では、再処理の過程で使う有機溶媒が誤って放射性物質と混じり、火災や爆発事故が起きています。日本原燃の再処理工場では試験運転の際、廃液をガラスと混ぜて固める工程で装置が詰まるトラブルが続きました。

 Q 地震、津波の影響は。
 A 審査の過程で、施設の耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)を最大加速度700ガルに引き上げました。また、敷地から半径160キロ以内の火山噴火時に降り積もる火山灰は厚さ55センチに達するとしたほか、最大で秒速100メートルの竜巻喪来も想定しました。敷地が海抜55メートルにあることから、津波の影響は考慮していません。

 Q 今後の審査とは。
 A 重大事故や自然災害に関する想定を踏まえた安全対策が工事計画に反映されているかどうかを規制委が確認します。この作業について、規制委の更田豊志委員長は「極めて長い時間がかかる懸念がある」と述べており、難航しそうです。
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