[2020_07_23_01]「この学校が大好きでした」 原発事故で廃校、解体前に見学会 福島・浪江(毎日新聞2020年7月23日)
 
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「この学校が大好きでした」 原発事故で廃校、解体前に見学会 福島・浪江

 東京電力福島第1原発事故で、全町避難を余儀なくされた福島県浪江町では来春、事故前にあった町立の9小中学校のうち、7校が廃校になる。児童・生徒が戻らず、老朽化する校舎の維持管理費が町の財政を圧迫するのを避けるためだ。23日、解体される浪江、幾世橋、大堀、苅野の4小学校と浪江中学校の見学会が始まり、県内外から訪れた卒業生らが母校との別れを惜しんだ。【寺町六花】
 浪江町では原発事故前、9小中学校に約1700人の児童・生徒が通っていたが、全校が臨時休業になった。一部は避難先で再開したが在校生が減り、大半が休校となった。
 現在、子供が在籍している町立小中学校は、避難指示が解除された後の町中心部で2018年4月に開校したなみえ創成小・中学校(現在の児童生徒26人)と、避難先の二本松市で授業を続ける津島小だけ。津島小は在校生が6年生1人で、来春から休校になる。
 来年4月1日に廃校となる7校のうち、津波で被災した請戸小は、震災遺構として整備が進む。一方、町は今年3月、校舎が比較的新しい幾世橋と、大堀の2小学校を活用する民間事業者を公募したが成立しなかった。
 23日に始まった見学会では、タイムカプセルの掘り出しや、保管されていた教材などの返却、学校物品の譲渡予約などが行われた。訪れた人々は同級生との再会を喜び、校舎への思いを寄せ書きしたり、卒業アルバムで当時の思い出を振り返ったりしていた。
 幾世橋小では、1993年度の卒業生4人がタイプカプセルを掘り起こした。埼玉県草加市に避難するお笑い芸人、八橋真理子さん(38)が未来の自分へ書いた手紙を開くと、近くにあった駄菓子屋でガムを買えるよう、10円玉が添えられていた。八橋さんは「10円玉はお守りにしてとっておきます。校舎の解体は寂しいけれど、ソフトボールを練習したり、走り回ったりした思い出は消えません」とほほ笑んだ。
 震災当時浪江中2年だった男性(24)は、避難先の茨城県から駆けつけた。2011年3月11日の午前中は3年生の卒業式に出席。午後には友達と遊ぶ約束もあった。転校先の学校にはなじめず、気持ちがふさぎ込む日が続いたという。教室の自分の机を眺め、「この学校を卒業するものだと思っていた。友達や先生、震災前のこの学校が大好きでした」とつぶやいた。

 見学会は25日まで、午前10時〜午後3時。
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