[2020_07_03_10]東海第二差し止め訴訟 「首都圏に壊滅的被害」 原告側改めて訴え結審(東京新聞2020年7月3日)
 
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東海第二差し止め訴訟 「首都圏に壊滅的被害」 原告側改めて訴え結審

 日本原子力発電(原電)が再稼働を目指す東海第二原発(東海村)を巡り、住民ら約二百人が原電に運転差し止めを求めた訴訟が二日、水戸地裁(前田英子裁判長)で結審した。判決は来年三月十八日に言い渡される。提訴から八年。原告側は最終弁論で「首都圏に壊滅的な被害をもたらす東海第二を止めてほしい」と改めて訴えた。(松村真一郎)
 原告共同代表の大石光伸さん(62)は意見陳述で、地震動に関するデータの提出を何度も要求したものの、「拒否し続けられた」として原電の非協力的な姿勢を批判した。原告側が求めていた裁判長の現地検証の申し立ては却下された。
 結審に際して原告側は、十一項目にわたる最終準備書面を提出し、ケーブルの安全性などに論点を絞って疑問を投げ掛けた。
 原電は火災への備えとして、東海第二の安全上重要な設備につながるケーブルを難燃性に取り換える一方、工事により建屋への悪影響が想定される場合は、防火シートを巻く「複合体」で対応するとしている。
 これに対し原告側は最終準備書面で、複合体は難燃ケーブルと同等以上の性能がなく、対策が不十分と指摘した。
 また最終準備書面では、想定を超える地震動が原発を襲った場合、圧力容器を支えるために周囲に取り付けられている「スタビライザ」が破損したり、格納容器が圧力で変形する「座屈」が生じたりして重大事故につながるとしている。
 一方、原電側は最終準備書面で、再稼働に必要な国の新規制基準を踏まえた対策を講じているとして請求棄却を求めた。
 閉廷後の記者会見で、大石さんは「しっかりと問題点を追及してきた。明らかになったことを地域に知らせたい」と語った。原告代理人の海渡雄一弁護士は、判決時期について「再稼働の準備が進む中で、判断を求めるベストタイミングになった」と評価した上で、「勝訴判決を信じて判決日を待ちたい」と自信を見せた。
 東海第二原発を巡っては、原電が昨年二月に再稼働の方針を表明。事故対策工事が進められている。
 東海第二の三十キロ圏内には、全国で最多の約九十四万人が生活し、事故が起きると首都圏に影響が及ぶとして、茨城や東京など十都県二百六十六人が一二年七月、原電に運転差し止めを求めて水戸地裁に提訴した。原告団の住民は、亡くなるなどして現在は九都県の二百二十四人に減った。
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