[2020_07_03_02]低効率の石炭火力発電所約100基を段階的に休廃止 2030年度までに 梶山経産相が表明(東京新聞2020年7月3日)
 
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低効率の石炭火力発電所約100基を段階的に休廃止 2030年度までに 梶山経産相が表明

 梶山弘志経済産業相は3日の閣議後記者会見で、エネルギー効率が低く二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火力発電所の休廃止を段階的に進めることを表明した。今後、有識者会議を設置し、発電事業者に休廃止を促す際の具体策などを検討。2030年度までに低効率発電所の約100基の休廃止を進める。

◆政府が従来のエネルギー政策を転換

 地球温暖化問題が深刻化する中、欧州ではCO2排出を抑止する「脱炭素化」の一環として、石炭火力からの脱却が加速化している。一方、日本は先進7カ国(G7)で唯一、石炭火力の新設計画があり、国際的な批判にさらされていた。
 国内の石炭火力は約140基あり、うち114基が旧式で非効率とされる。このうち、離島などの特殊地域を除く約100基が休廃止の対象になる見通し。
 資源エネルギー庁によると、日本の総発電量(18年度)に占める石炭火力の割合は32%で、天然ガス火力の38%に次ぐ規模。政府は今後、石炭火力の比率を下げて再生可能エネルギーの普及を進める考え。
 これまで政府は石炭火力を「ベースロード(基幹)電源」と位置付けており、エネルギー政策の大きな転換となる。一方、新型で高効率の石炭火力は維持した上で新設は認め、原子力発電所の再稼働を進める方針も変えないとみられる。

◆脱炭素化に向け再生可能エネの普及に本腰を

<解説> 梶山弘志経産相がエネルギー効率が悪い石炭火力発電所の休廃止を表明した。CO2排出を抑える脱炭素化に向けた一歩とはなるが、石炭火力の全廃方針を掲げる欧州各国に比べれば見劣りする。脱炭素化を進める上で重大事故のリスクがある原発に頼らず、CO2排出が少ない再生可能エネルギーの比率をどう高めるか。政府の本気度が問われる。
 日本は東日本大震災以降、原発の代替電源として液化天然ガス(LNG)や石炭火力の比率を高めた。石炭は価格が安く、安定的に調達できるとして、経産省や産業界は「石炭火力維持」の方針を崩さずにきた。
 一転、旧型の石炭火力休止に踏み切った背景には、世界で強まる脱炭素化の潮流がある。石炭火力はCO2の排出量が天然ガス火力の約2倍と多く、ドイツや英国などは石炭火力の全廃方針を掲げる。
 今後は石炭比率を下げながら、電力の安定供給をどう実現するかが課題となる。原発は安全対策コストがかさみ、地震大国の日本での再稼働は現実性に乏しい。再生エネの普及策に本腰を入れ、環境と暮らしを両立するエネルギー政策を立案する必要がある。(石川智規)
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