[2020_06_04_04]【避難指示解除】市町村の意向踏まえよ(6月4日)(福島民報2020年6月4日)
 
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【避難指示解除】市町村の意向踏まえよ(6月4日)

 東京電力福島第一原発事故による帰還困難区域の避難指示解除を巡り、除染をしていない地域でも放射線量が基準を下回る場合、避難指示を解除できる方向で政府が検討していることが明らかになった。解除の考え方は、帰還困難区域を抱える市町村によって異なる。国はそれぞれの市町村の思いをくみ取り、避難指示解除までの道筋を早急に示すべきだ。
 政府は避難指示を解除する要件として(1)線量が年間二〇ミリシーベルト以下に低下すること(2)社会基盤整備や除染の進展(3)地元と十分な協議−を決めている。今回の検討で政府は、三つの要件を維持するとしているが、どういう場合に除染せず解除とするのかは判然としない。
 これより先に飯舘村は原発事故に伴い長泥行政区に設定された帰還困難区域の一括解除に向け、特定復興再生拠点区域(復興拠点)外に村営復興公園を設ける方針案を打ち出した。拠点以外の解除が見通せない中、国に先んじて方向性を提示した形だ。
 長泥行政区の面積は約千八十ヘクタールで、復興拠点は約17%に当たる百八十六ヘクタールにとどまっている。拠点外に関する方針の早期提示や自由に訪問できる環境を求める住民の声を踏まえた対応で、人々が集う広場を設けて家屋解体を進め、拠点と同じ二〇二三(令和五)年春の解除を目指す。
 先月の衆院東日本大震災復興特別委員会では、自民党の根本匠衆院議員(元復興相、福島県2区)が帰還困難区域の土地利用について(1)特定復興再生拠点(2)農地(3)産業団地(4)山林・里山−に分類して解除を検討する案を示した。自民、公明両党の震災復興加速化本部は先月末、政府に帰還困難区域を抱える自治体の意向や現状を考慮し、土地利用の在り方を検討するよう求めた。
 今回の政府の動きはこうしたことが背景にあるとみられる。ただ、帰還困難区域を抱えている市町村の多くは、復興拠点外の地域の除染や家屋解体を要望している。双葉郡の首長の間には「住民には古里への愛情がある。土地利用の有無にかかわらず元に戻して返すのが当然だ」「帰還には生活できる環境回復が不可欠」と、徹底した除染を求める声が強い。
 原発事故から十年目に入り、避難指示解除の工程が見えないまま市町村が復興計画を描くのは容易ではない。線量低減の目標や達成の見通しがなければ安全・安心にもつながらない。国は実情に向き合い、解除時期や手法について丁寧に方策を探らなければならない。(円谷 真路)
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