[2020_03_17_07]関電・金品受領問題生んだ“きっかけ”は『虫害』…元助役との歪んだ関係を“元所長”も証言(MBSニュース2020年3月17日)
 
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関電・金品受領問題生んだ“きっかけ”は『虫害』…元助役との歪んだ関係を“元所長”も証言

 関西電力の幹部らが福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていた問題で、第三者委員会は、幹部らのメールを復元するなどして、元助役との生々しいやりとりを調査報告書に記しました。根深い両者の癒着。そのきっかけとなったのが地元でのある“トラブル”でした。
 3月16日朝、険しい表情で経済産業省を訪れた関西電力の森本孝新社長。
 「業務の改善計画を提出していただきたい。」(資源エネルギー庁 高橋泰三長官)
 経済産業省・資源エネルギー庁は、法令順守体制の強化や再発防止を求め、関電に業務改善命令を出しました。

第三者委員会「金品受領者は75名」

 3月14日に行われた第三者委員会の会見では、5か月かけて調査した最終報告書の内容が明らかにされました。
 「基本的にはユーザー目線によるコンプライアンスが全く見られない。透明性に欠けるということが原因の大きな根っこだろうと。」(第三者委員会 但木敬一委員長)
 去年10月、関西電力の岩根茂樹前社長は、自らを含む幹部が福井県高浜町の森山栄治元助役らから多額の現金や金貨などを受け取っていたと発表しました。
 今回の第三者委員会の報告は、さらにそれを上回るものでした。
 「(関電の)社内調査で判明した23名の金品受領者以外に、本調査でさらに52名。合計しますと75名になります。」(第三者委員会 但木敬一委員長)
 受け取った関電幹部らは75人、金品は総額約3億6000万円相当にも上りました。

金品受領者が証言「会社でなく個々人でするのが暗黙のルール」

 新たな受領対象者として公表された幹部の一人で、1990年代に高浜原発の所長を務めたOBを、MBSは取材していました。
 「背広を1回もらったのと、あとは小判というかね。」(高浜原発の元所長)
 森山元助役から直接受け取ったという2枚の小判。当時から森山氏の対応は会社ではなく“個々人”でするというのが暗黙のルールで、元所長は後日、絵画と高級包丁を返したといいます。
 「おそろしいな。誰も会社も守ってくれる人おらへんのですよ。それぞれで受け取れという話から。」(高浜原発の元所長)
 その森山元助役は地元・高浜の原発誘致に尽力した人物でした。
 「原電以外に高浜町を救済する経済浮揚策はないのではないかと。(高浜)3、4号炉を今回やろうじゃないかと。これは国策に基づいたことでもありますんで。」(森山栄治元助役・1977年当時)
 報告書によりますと、金品の授受は森山氏が助役を退任した直後の1987年から始まったとされていますが、その2年前に、森山氏との異常ともいえる関係が生まれる『きっかけ』となった出来事があったといいます。

関電と森山元助役の歪んだ関係(1)フナクイムシ問題

 高浜原発に隣接する福井県高浜町の音海地区にある、関西電力の駐車場。この土地はかつて、地元の会社とトラブルになったといいます。その際に間をとりもち、丸く収めたのが森山元助役でした。
 以前この場所には、海に木材を浮かせて管理する会社の貯木場がありました。しかし、運転が始まった高浜3、4号機から出る温排水で海水の温度が上がり、木を食べる2枚貝の仲間「フナクイムシ」が繁殖し、木材の被害が頻発するようになったといいます。
 「温かくなると虫が出てくる。放っておくと虫が木の中に入って使い物にならないようになる。」(貯木場で働いていた人)
 経営難に陥った会社は関電に土地や建物を買い取るよう要求。協議が難航する中、関電が頼ったのが当時の森山助役でした。結果、不動産鑑定価格6億4600万円の倍近い約11億円で関電が土地を購入し、解決していたのです。
 第三者委員会はこうした原発に関する地元対策を森山氏に一任し、不透明な手段で解決していたことが、結果的に「関電の弱みを握る人物」として影響力を強めることに繋がったと指弾しました。
 「その不透明な部分は彼が握っているんです。暗部を握っていることのパワー。それが彼をモンスターにした非常に大きな理由ではないか。」(第三者委員会 但木敬一委員長)

関電と森山元助役の歪んだ関係(2)便宜供与

 第三者委員会は、幹部や社員が森山氏の強引な要求に対し、応じた事例が多数あったと指摘。高浜町にある森山氏の関連会社に工事を発注するなど、特別な配慮をしてきたとして、「便宜があった」と認定しました。また幹部らが森山氏からの金品を拒めなかった理由については…
 「金品を受け取ること自体が森山氏のひとつの“鎖”。共犯者の中に入れられて抜けられない事態を招いていた。」(第三者委員会 但木敬一委員長)
 最終報告書の提出を受けて退任した岩根茂樹社長に代わり、社長に就任した森本新社長。原子力事業ではなく営業や企画部門の出身です。
「今回生まれ変わらなければ、明日の関西電力はない、という不退転の決意で改革にまい進して参ります。」(関西電力 森本孝新社長)

 新体制によって失われた信頼を取り戻すことはできるのでしょうか。
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