[2019_11_01_04]北海道沖の小島消失と 沖ノ鳥島EEZ権益の存亡(島村英紀2019年11月1日)
 
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北海道沖の小島消失と 沖ノ鳥島EEZ権益の存亡

 北海道のオホーツク岸にある猿払(さるふつ)村の約500メートル沖合にあった無人の小島「エサンベ鼻北小島」が消えた。海上保安庁が9月に消失を確認したのだ。
 この島は1987年の測量では、海抜が1.4メートルあった。だが、昨年10月、地元住民が目視できないことに気付いた。波や流氷による浸食などで消失したものだと思われている。島は、小さくなったり、このように消えることは珍しくはない。
 消えた北海道の島は沿岸近くにあるから日本の領海問題に発展することは少ないが、日本でいちばん影響するのは「沖ノ鳥島」だろう。
 日本の南端にあるこの島は、まわりに島がないだけに、日本のEEZ(排他的経済水域)を拡げるのに大いに役立っている。東京から1700キロ、小笠原の父島からも西へ900キロ離れている。
 この島のまわりに200海里(約370キロ)のEEZがあれば、日本の陸地全部を上回る面積が増える。漁業も資源採掘もEEZを持つ国に管轄権がある。
 この島は無人島で、ごく小さい。そのうえ、気をつけないと北海道の島のように消滅してしまう。もともと16世紀にスペイン船が発見したものだ。1933年の測量では「北露岩」の南側に海抜2.25メートルの「南露岩」があり、それ以外に海抜0.9〜0.6メートルの露岩があって、合計6つの露岩が満潮時にも姿を現していた。
 だが南露岩は1938年に消失が確認された。北露岩を改称した「北小島」と「東小島」以外の4つの岩も風化と海食によって消え失せたと見られている。
 残りの島がなくなったりしたら大変だ。このため日本政府は1987年から「保全」に乗り出した。東小島と北小島の島のまわりに鋳鉄製の消波堤を作り、内部に直径50メートルのコンクリート製護岸を設置した。大きなドーナッツで小さな島を囲った滑稽な姿だ。
 ところが、コンクリートの破片が肝心の島を傷つけて島を小さくしてしまうという事故が起きた。このため東小島は高価なチタン製の防護ネットで覆うことになった。
 だが、中国は「島」ではなくて「岩」だとして日本のEEZは認めていない。韓国も北朝鮮も台湾も認めていない。これらの国々は沖ノ鳥島が日本に属していることには異論はないが、「岩」ゆえにEEZはない、という立場なのだ。
 たしかに、1994年に発効した国連海洋法条約では、「岩」を「人間の居住や独自の経済的生活を維持できない岩はEEZを有しない」と書かれている。また、施設や人工島などは領海の基線を変更することはないのが国際的な理解だ。
 北小島の面積は8平方メートル、乗用車1台分しかない。海抜は第二次世界大戦以前には2.8メートルあったが2008年には約1メートル。満潮時には約16センチが海面上に現れるだけだ。東小島はもっと小さくて畳1畳分、面積1.6平方メートル。海抜は昔は1.4メートルだったが、2008年には約0.9メートル。満潮時には約6センチしか海面上に現れない。
 日本の権益はごく小さな「島」の存亡にかかっているのである。

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